テクノロジー別の国内IoT市場で最も高い成長が期待されているのはサービスだ。IDCでは、このIoTサービスを、「IoT向けITサービス」「IoT向け非ITサービス」「IoTを活用した業務サービス」(=「IoT Enabled」)の3種類に分けている。
IDC Japan ITサービス シニアマーケットアナリストの植村卓弥氏は「現時点でIoTサービス市場のほとんどを占めるのはIoT向け非ITサービスだ。しかし、今後はIoT向けITサービスが成長し、そのIoT向けITサービスによって創出されるIoTを活用した業務サービスが急拡大していく」という見方を示した。
今回の発表では、国内IoT向けITサービス市場予測も示しており、2016年の548億円から年平均64.8%で成長し、2021年には6670億円に達するとした。植村氏は「IoT向けITサービス、そしてその後に創出されるIoTを活用した業務サービスの成長には幾つか阻害要因がある。例えば、PoC(概念実証)からなかなか事業に反映できずに『PoC疲れ』が起きていることや、部門間や企業グループ内、異業種間でのデータ連携を阻む障害などだ。IoTサービス事業者は、PoCを経営層に浸透させたり、データ連携を阻む障害を解決したりして“つなぐ”役割を果たせば、IoT向けITサービス市場を獲得しやすくなるだろう。また、IoTを活用した業務サービスの市場の拡大を促進するには、自身がプレーヤーになって積極的に関わっていく、投資まで行うという姿勢が必要になる」と強調する。
テクノロジー別の国内IoT市場で最も成長率が低いハードウェアだが、産業用ネットワークについては今後大きな成長が見込めるという。
IDC Japan コミュニケーションズ グループマネージャーの草野賢一氏は「IoT機器のネットワーク接続技術は、既存のフィールドバスからイーサネット/IPネットワーク、固定から無線活用へ移行し、無線技術の次世代化や5Gの活用が進み、市場規模も拡大していく。例えば、2016年の産業用ネットワーク市場は前年比1.5〜2倍になっており、目立った成長分野といえる」と説明する。
ネットワーク接続技術の進化によって、従来のITネットワークとの統合も進むことになる。しかし「セキュリティの観点から、ITネットワークとOT(制御技術)ネットワークは適度な分離が求められるだろう」(草野氏)ともしている。
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