製造業におけるIoTの導入では、OTとITの融合をはじめさまざまな課題がある。そこで、先行事例から抽出したIoT導入に向けた整備事項、すなわち「IoT導入の壁」について、前後編に分けて解説する。前編では、6つある「IoT導入の壁」を見ていこう。
多くの製造業を訪問すると「IoT(モノのインターネット)の活用推進を検討するように指示されているがどこから手をつけて良いか分からない」という声を聞くことが増えている。
製造業におけるIoT活用の難しさは、従来は工場主体となって導入・運用していた現場機器類に関するOT(Operational Technology:制御技術)の世界を飛び越えて、そこから取得されたデータを情報システム部主体で運用しているIT(Information Technology:情報技術)の世界と融合して行くことが必要となる点も要因の1つに上げられるのではないだろうか。
このように、IoT活用に向けての整備事項を検討する際は、OTやITに跨ったさまざまな項目を、従来の守備範囲を超えて検討する必要がある。
また、導入の効果をしっかりと獲得するためには、システムに関する項目以外にも目を向ける必要があるといえる。本稿では前後編の2回に渡って、IoTの先行事例から抽出した、IoT導入に向けた整備事項、すなわち「IoT導入の壁」について解説していく。
一般的なシステム導入と同じように、IoT活用は仕組みを導入するだけで経営的な効果を得られるものではない。システムに関する項目はもちろん、そこを流れるデータ、さらには、それに関わる人の技術・スキルや組織の役割分担といったものまで幅広く検討することが求められてくる。
このように、IoT活用に向けて必要となる「整備事項」を抜け漏れなく検討するためのフレームワークが「IoT導入の壁」である。
「IoT導入の壁」は、先行事例からIoT導入における「整備事項」を6つの領域で抽出・整理したもので構成している(図1)。それぞれの「IoT導入の壁」について、概要を示すと以下のようになる。
IoTの活用に必要なIT基盤が整備されていることが必要になる。図2に示したのは想定されるシステム環境である。
この壁に関して、解決が必要な「整備事項」として以下が上げられる。
現場のデータを収集・蓄積・分析・活用するための仕組みを、既存の仕組みに組み込み連携する必要がある。そのための設備の監視、コントロールや現場への情報提供の仕組みも必要となる。
インダストリー4.0やインダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)などで検討されているように、IoTを活用して全体最適を目指すには、生産現場のデータと計画系システムとの連携、設計システムと生産システムとの連携強化が必要になる。
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