東京工業大学は、国際宇宙ステーション「きぼう」でメダカを8日間連続で撮影し、骨芽細胞マーカーなどの骨関連遺伝子と、その他の5つの遺伝子の発現が無重力下で急上昇することを明らかにした。
東京工業大学は2016年12月28日、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟で生きたメダカを8日間連続で撮影し、骨芽細胞マーカーや破骨細胞マーカーなどの骨関連遺伝子と、その他の5つの遺伝子の発現が無重力下で急上昇することを発見したと発表した。無重力での骨量減少を解明する新たな手掛かりになるという。
同研究は、同大学生命理工学院の工藤明教授らが宇宙航空研究開発機構(JAXA)、千代田化工建設と共同で行った。成果は同月22日に、英科学誌「Scientific Reports」電子版で公開された。
2014年2月に行われた実験では、まず若田光一JAXA宇宙飛行士により、メダカの入った容器が実験棟の蛍光顕微鏡内に設置された。その後、日本の筑波宇宙センターから蛍光顕微鏡を遠隔操作して観察した。
メダカは体が透明で、生きたまま体外から骨の様子を観察しやすい実験動物だ。実験では、osterix-DsRed(骨芽細胞マーカー)、TRAP-GFP(破骨細胞マーカー)など、計4種類の骨関連遺伝子で改変したメダカを用いて、容器のジェル内でふ化直後のメダカを飼育した。このメダカは、改変した骨関連遺伝子のプロモーターが働くと蛍光発光する。
実験データを解析した結果、骨を形成する骨芽細胞と骨を壊す破骨細胞で発現する蛍光のシグナルが、無重力下で大きく上昇し、8日間その発現上昇が維持された。また、無重力にさらされた2日後の遺伝子発現を調べたところ、骨関連遺伝子の他に、c-fos、jun-B-like、pai-1、ddit4、tsc22d3という5つの遺伝子の発現が大幅に上昇した。
同成果は、個体レベルで解析できる生物を用いて、無重力への生物個体の初期応答の一端を示した世界初の例となる。宇宙飛行士は無重力になった直後から1カ月以内に急激に骨量が減少するが、同研究により無重力での骨量減少を解明する新たな手掛かりが得られたといえる。また今後、骨関連遺伝子以外の5つの遺伝子について、その分子機構を解明し、老人性骨粗鬆症への関与を明らかにするとしている。
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