IBMは、人々の仕事や生活を今後5年間で変える可能性を持つ、5つのイノベーションをまとめた「IBM 5 in 5」を発表した。言葉から精神疾患の兆候を予測したり、自動車の運転時に未知の危険を知らせたりと、見えないものを可視化する科学的手段だ。
IBMは2017年1月6日、人々の仕事や生活、関わり合い方を今後5年間で変える可能性を持つ、5つのイノベーションをまとめた「IBM 5 in 5」を発表した。同社の基礎研究所から生まれる新たなテクノロジーや市場・社会の動向に基づくもので、今後5年間で見えないものを可視化する技術として、5つの科学的手段を挙げている。
今回同社が発表したのは、以下5つの科学的手段となる。
(1)「AIにより、言葉がメンタルヘルスを知るきっかけとなる」
会話や書いた文章を新しいコグニティブ・システムで解析することで、医師や患者は、初期段階の発達障害、精神疾患、神経変性疾患の兆候をより早く予測したり、観察したりできるようになる。
同社は、精神医による問診の記録や録音を活用し、機械学習手法を組み合わせて会話の中からパターンを見つけ出して、臨床医が統合失調症や躁病、うつ病などを正確に予測するための支援をする。現在、約300語ほどで、ユーザーが精神病である可能性を臨床医が予測できる段階だという。
今後、同手法はパーキンソン病やアルツハイマー病、ハンチントン病、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、自閉症、ADHD(注意欠陥・多動性障害)といった神経発達障害の患者の支援にも使われる。
(2)「ハイパー・イメージングとAIが私たちにスーパー・ヒーローのビジョンをもたらす」
同技術では、未知の危機や視界から隠れている危険を明らかにする。ハイパー・イメージング・テクノロジーと人工知能を使った新しい画像機器で、電磁スペクトルの周波数帯を複数組み合わせることにより、可視光の領域を超えた観察が可能になる。
例えば、霧や雨の中で車を運転する時の視界を確保したり、見えにくい道路の状態を検知したり、行く手にある物体までの距離や大きさを知らせるようになる。こうした機器が現在同社によって開発中で、今後、持ち運び可能で手頃な価格なものとして日常生活の一部になる。
(3)「マクロスコープが限りなく細部にわたり地球の複雑さを理解することを支援する」
機械学習アルゴリズムやソフトウェアを活用したマクロスコープが、地球の複雑なデータをまとめ、その意味を見いだすため分析をする。例えば、気候、土壌条件、水位、それらと灌漑(かんがい)との関係性について解析したデータを用いて、農家は栽培に適した農作物を選択し、水資源を節約しながらどこに作物を植えて生産性を上げるかを決定できるようになる。
(4)「チップ上のメディカル・ラボが私たちの健康探偵としてナノスケール・レベルでの病気の探知を行う」
新しいメディカルlab-on-a-chip(チップ上のメディカル・ラボ)が、ナノテクノロジー健康探偵として機能するようになる。最終的には、少量の体液からバイオマーカーを定期的に計測し、各家庭からその情報をクラウドに送信するため、携帯機器に実装される。体の状態を細部にわたって調べた結果と睡眠モニターやスマートウオッチから得たデータと合わせ、病気の兆候を警告して病気の進行防止に活用する。
(5)「スマート・センサーが光速レベルで環境汚染を探知」
新しいセンサー技術により、天然ガスの採掘井戸や倉庫施設の周辺、輸送経路で目に見えないガス漏れの正確な探知が可能になる。広大なガス・インフラを、クラウドにつながっているIoT(モノのインターネット)センサーのネットワークで常時監視し、発見に数週間かかっていたガス漏れが数分で発見できるようになる。
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