IBMは新たに自然対話型人工知能「ワトソン」によるデータ分析をクラウドサービスとして利用可能な「IBM Watson Analytics」の提供開始を発表した。
日本IBMは2014年12月18日、同社が開発した自然対話型人工知能「ワトソン(Watson)」によるデータ分析を、クラウドサービスとして利用可能な「IBM Watson Analytics」の提供開始を発表した。ビジネスモデルはフリーミアム(無償のサービスを多くのユーザーに提供し高機能な有償版で利益を得るビジネスモデル)型とし無償版が用意されている。ただし、現在は英語版のみの提供となる。
ワトソンは、IBMが研究開発する人間の認知に関わる情報処理(コグニティブ・コンピューティング)の総称。2006年から研究開発プロジェクトをスタートさせたが、2011年に自然対話型で回答が導き出せる人工知能として、米国のクイズ番組「Jeoparady!」に出場し人間に勝ったことで一気に注目を集めた。ワトソンの特徴となるのが、自然言語による対話型のインタフェースと分析結果の視覚化という点だ。従来の分析はデータサイエンティストなどデータ分析の専門家が必要なケースも多かったが、ワトソンであれば質問を重ねていくだけで、自動で最適な分析シナリオや回答を判断し、それを提示することができるようになる。
「よくGoogle検索と比較されるが、Googleは検索する人の行動をベースにしアクセス順位の高い順番で多くの検索結果を表示するという形だが、ワトソンは統計分析に基づき、極論をすれば1つの正しい回答を導き出せるというのが大きな違いだ」と日本IBM専務執行役員 ソフトウェア事業本部長 ヴィヴェック・マハジャン(Vivek Mahajan)氏は強調する。
同社では既に2011年から医療診断や金融関係のアドバイスなどで先行導入を進めているが「われわれはこの技術を一部の特殊な用途だけに限定するつもりはない」(マハジャン氏)とする。そのため2014年1月にはワトソンをより幅広い分野に適用することを目指し「IBM Watson Group」を設立(関連記事:IBMが人工知能「Watson」事業部の本部を開設、世界規模で活用の推進へ)。
「分析技術を専門家だけが使うのではなく、ビジネスのあらゆる局面で利用できるようにすることを目指している。例えばテレビは何台生産すればいいのかということや、今期の販売目標が達成できなかった理由は何か、というようなことに答えられるようにし、より幅広いビジネスの場での活用を目指す」とマハジャン氏は述べている。
今回のクラウドサービスとしての「Watson Analytics」の提供もこの“用途を広げる”動きの一環となる。「一般的なBI(ビジネスインテリジェンス)、BA(ビジネスアナリティクス)のツールは、システム構築に時間がかかる上に高額となるケースがあった。しかしクラウドサービスで提供することで非常にローコストで、多くのビジネス部門が導入できる可能性が生まれる」とマハジャン氏は語る。同サービスはブラウザーベースで提供されるため、モバイルなども含めたマルチデバイスでの活用も可能だとしている。
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