トヨタ自動車は、小型バス「コースター」を24年ぶりにフルモデルチェンジして発売する。横転に対する安全性や、乗員の快適性を向上した。商用車などを担当するトヨタ自動車の社内カンパニー「CV Company」として初めて手掛ける全面改良となる。コースターを手始めに、これまで日の当らなかった商用車開発を変えていく。
トヨタ自動車は2016年12月22日、小型バス「コースター」を24年ぶりにフルモデルチェンジして発売すると発表した。ボディーの高剛性化を図り、バスの安全評価基準「ECE基準 R-66(ロールオーバー性能)」に適合させた。この他にも、室内空間を広げて快適性を向上するとともに、静粛性を改善した。車両価格は594万円から、月間販売目標台数は160台。
商用車は乗用車と比較してトヨタ自動車社内での優先順位が低く、「日が当らないことが多く、タイムリーな商品力の強化が難しかった。今後は、商用車などを担当する『CV Company』としての優先順位に基づいて開発を推進していく」(トヨタ自動車 専務役員、兼トヨタ車体 代表取締役社長の増井敬二氏)と説明する。
コースターは1969年に初代が登場して以来、国内外で累計55万台以上を売り上げている。販売台数は増加傾向にあり、需要の拡大が見込まれている。日野自動車には「リエッセ II」としてOEM供給しており、トヨタグループとして過半数以上のシェアを握っている。
トヨタ自動車は2016年4月に製品軸のカンパニー制に移行しており、コースターは商用車やミニバン、SUVを担うCV Companyとして初めてのフルモデルチェンジとなる。
CV Companyには、「アルファード」などのミニバン、「ハイエース」など商用車、SUVの「ランドクルーザー」を生産するトヨタ車体も所属している。増井氏がCV Companyとトヨタ車体を一体経営することで、仕事の進め方を変えている。
コースターは、CV Companyとして“もっといいCVづくり”の第1弾となる。カンパニー制となることで、乗用車と比較して優先順位が下がりがちだった商用車づくりに集中して取り組んでいく。具体的には、タイムリーな商品力強化と開発効率の改善、安全および環境性能の向上に注力する。
商品力強化に向けては、地域の足として、買い物や通院が困難な住民の移動支援に使えるミニバンを提案していく。2列目シートの一部を廃止することで、3列目シートの乗員が乗り降りしやすくする。また、福祉車両向けに、サイドリフトアップシートよりも乗降性が高いリフトアップチルトシートも、ミニバンの一部に設定する予定だ。
開発の効率化に向けては、もっといいクルマづくり「TNGA(Toyota New Global Architecture)」と同様に、フレームシルエットの統一や、プラットフォームの一括開発を行う。フレームは現在3〜4種類あり車種ごとに変更が加えられているのを統合していく。
24年ぶりのフルモデルチェンジとなったコースターは、バスに対する安全性の要求が高まっていることに対応している。ボディーには、ルーフと側面、フロアの骨格をつないで一体化するための環状骨格を採用した。また、高張力鋼板も使用し、バスのボディー強度に関する安全評価基準「ECE基準 R-66(ロールオーバー性能)」を超える性能を確保している。
これを受けて、新モデルから生産を行う岐阜車体では、レーザー接合の設備を導入するなどラインを一新した。これまでコースターの生産はトヨタ車体の吉原工場で行っていたが岐阜車体の本社工場に移管。吉原工場はランドクルーザーの生産に特化してSUV需要に対応し、岐阜車体ではコースターとハイエースを生産する。
環状骨格を取り入れたことによる剛性の向上は、静粛性の改善にも効いている。エンジンカバーの構造変更やボディーのシール高剛の強化、防音材の配置見直しも静粛性に貢献している。
さらに、横滑り防止装置(VSC)を全車標準装備とした他、運転席と助手席にはSRSエアバッグやシートベルトプリテンショナーやシートベルトが胸部にかける力を低減するフォースリミッター機構を採用した。
乗員の快適性も向上した。室内高や天井のコーナー部、室内幅を拡大することで、室内空間を広げている。室内高は60mm、室内幅は40mm増え、乗員が余裕を感じられるようにした。
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