インテルが人工知能(AI)技術や事業、ビジョンについて説明。買収企業の技術を取り入れたAIプラットフォーム「Nervana」により、小から大まで規模に応じてスケーリングさせられるAI技術を提供する。GPUが最適というイメージが強いディープラーニングについても「それは先入観にすぎずインテルアーキテクチャのようなCPUも十分に有効」とした。
インテルは2016年12月9日、東京都内で会見を開き、米国本社が同年11月17日に開催した「AI Day」の発表内容を中心に同社の人工知能(AI)技術や事業、ビジョンについて説明した。
インテル データセンター・グループ・セールス ディレクターの福原由紀氏は「AIによって得られる体験の広がりが予見される中、体験の広がりを実際に実現できるような機能のソリューションを提供できるように幾つかのM&Aを行った」と語る。直近のAI関連のM&Aは、メモリベースの推論手法と異種混在データに対する透過解析が可能なプラットフォームを提供するSaffron(サフロン)や、画像認識プロセッサを手掛けるMovidius(モビディアス)、そしてAI技術で最も注目を集めているディープラーニングのベンチャーだったNervana Systems(ナーバナ・システムズ)の3社になる。
特に、Nervana Systemsの技術は、今後のインテルのAI技術の中核に位置付けられるもので、AI Dayで発表したAIプラットフォームの名称も「Nervana(ナーバナ)」となっているほどだ。
福原氏は「メインフレーム、サーバ、クラウドというコンピューティング技術の進化の次にくるのがAIだろう。今後AIによるワークロードは2020年までに12倍になるとみている。2016年時点で、AIワークロードの97%はインテルアーキテクチャ(IA)によって計算処理されている。しかしAIにはさまざまな手法や実装があり、技術もどんどん変化していく。それら多様なAIがIA上で処理できるようにしていかなければならない」と強調する。
AIの多様性への対応に向けてGoogle(グーグル)との提携も強化した。代表的なディープラーニングのフレームワークとなっている「TensorFlow」をIAに最適化した他、クラウドのコンテナ管理に用いる「Kubernetes」のIAへの最適化、クラウド「Google Cloud」にインテル製チップを用いたIoT(モノのインターネット)をつなげやすくすることなどだ。
またインテルのAI戦略を具体化していく「Nervana AI諮問員会」を発足させ、技術者や学生向けにAI技術を啓発していく「Nevana AI Academy」などにも取り組んでいる。
AI Dayにおける発表で最も注目されたのが、先述したAIプラットフォーム「Nervana」である。Nervanaは、サーバやワークステーションといったエンタープライズ向けのプロセッサ製品「Xeon」を核に、AIを実装するのに必要な製品/技術をまとめた新ブランド名称となる。
Nervanaの説明を担当したのは、インテル データセンター・グループ・セールス アジアパシフィック・ジャパン担当 HPCディレクターの根岸史季氏だ。根岸氏は「これまでの幾多の屍を越えて進化してきたAI技術だが、ディープラーニングの革新が変動力になって再度注目されるようになった」と述べる。
大まかにマシンラーニング(機械学習)と推論システムに分けられるAI技術だが、ディープラーニングはマシンラーニングの1つの手法となる。「ディープラーニングを用いたAIは人間の能力を超えるほどの力を発揮するようになった。グーグルの『DeepMind』が囲碁のチャンピオンに勝利しただけでなく、画像認識や自然言語理解でも、人間よりも正しく認識できるようになりつつある。このことは、人間の仕事をAIによって自動化できるようになるということを示している」(根岸氏)という。
ただしディープラーニングにも課題がある。根岸氏は「1つは学習処理に必要なコンピューティング要件が大規模であること、もう1つはAIの性能がデータ量に応じて変化することだ。ムーアの法則の限界が見えてきたことなどもあって、並列処理できるプロセッサ数を増やしてもそれに比例して性能を伸ばすのは難しい。小から大まで規模に応じてスケーリングさせられる技術が必要だ」と指摘する。
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