PTCジャパンのユーザーイベント「PTC Forum Japan 2016」の基調講演に米国本社PTCの社長兼CEOを務めるジェームズ・E・ヘプルマン氏が登壇。「IoT時代のモノの新しい見方〜現実世界とデジタル世界の収束」と題して、IoTプラットフォーム「ThingWorx」を中核とする同社の事業戦略を説明した。
PTCジャパンは2016年12月1日、東京都内でユーザーイベント「PTC Forum Japan 2016」を開催した。同イベントでは、米国本社PTCの社長兼CEOを務めるジェームズ・E・ヘプルマン(James E. Heppelmann)氏が来日し、「IoT時代のモノの新しい見方〜現実世界とデジタル世界の収束」と題した基調講演を行った。
PTCはIoT(モノのインターネット)プラットフォーム「ThingWorx」を2014年1月に買収して以降、CAD/PLMといった製造ITツールにとどまらない事業展開を推し進めている。現在、世界でさまざまなIoTプラットフォームが“増殖”しているような状況だが、調査会社によればThingWorxの世界シェアは18%もしくは27%と報告されており「明らかなマーケットリーダー」だという。
そんなPTCのトップを務めるヘプルマン氏が講演の最初で言及したのが「フィジカルとデジタル世界の融合の実現」である。同氏はフィジカルの世界とデジタルの世界を、2016年6月に刷新した同社の企業ロゴに当てはめ「上側の白い部分がフィジカルの世界、下側の緑色の部分がデジタルの世界に当たる。そしてこれは陰陽も表している」と語る。
そしてこの「フィジカル」と「デジタル」の陰陽を表す企業ロゴを用いながら、同社の製品群がどのように展開しているかを説明した。まず30数年前にPTCが投入した3D CAD「Pro/ENGINEER」によって、デジタルの世界で設計検討がいくらでもできる時代が始まった。その後PTCはPLM(製品ライフサイクル管理)ツール「Windchill」やALM(アプリケーションライフサイクル管理)ツール「Integrity」などを傘下に収めていった。
デジタル世界での設計検討をフィジカル世界に直接現出させられる手段として注目されているのが3Dプリンタだ。PTCも現行の3D CAD「Creo」の最新バージョン「Creo 4.0」で3Dプリンタでの造形出力に最適な格子構造を自動生成する機能を追加している。
もちろん、3Dプリンタによるラピッドプロトタイピングだけでなく、PLMやALMとつなげたスマートマニファクチュアリング(インダストリー4.0)によるフィジカルな製品の製造も可能だ。
そしてこれらの手法で作りだしたフィジカルな製品から、IoTによって得たデータとその分析結果から「デジタルツイン」を生み出すことができる。ここで活躍するのが先述したIoTプラットフォームであるThingWorxだ。ヘプルマン氏は「“アバター”とも呼べるこのデジタルツインによって、デジタル世界での設計検討に情報がフィードバックされる」と強調する。
デジタルツインの情報は、設計検討だけでなく製品サービスにも役立てられる。いわゆるIoT活用サービスにつながる部分だ。PTCはSLM(サービスライフサイクル管理)ツールを展開する「Servigistics」を2012年に買収したこともあり、デジタルツインから派生する同社の事業展開の中でも重要な役割を果たすことが期待されている。
PTCがIoT活用サービスを構成する要素として重視しているのがAR(拡張現実)だ。2015年11月に買収したAR開発プラットフォーム「Vuforia」によって、フィジカルな製品にデジタル情報を重ねることで、現場におけるメンテナンス作業をはじめさまざまな事業展開が可能になるとしている。またデジタルツインの情報によって、ARだけでなくVR(仮想現実)活用への道も開けるとした。
そしてフィジカルの世界とデジタルの世界を覆うように、「全てをつなげる」(ヘプルマン氏)という「デジタルスレッド」によって、フィジカルとデジタルの世界の融合が実現されることになる。デジタルスレッドの風通しを良くするためにも、PTCはオープン化をさらに加速させていく考えだ。
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