サイバネットシステムは、VR(仮想現実)を用いた設計レビュー支援システム「バーチャルデザインレビュー」の販売を開始した。3D CADツールやCAEツールの導入/普及に合わせて進んだ合理化によって失われた、設計業務におけるノウハウやちょっとしたコツなどの情報共有を可能にする「ワイガヤ設計レビュー」をコンセプトに開発された。
サイバネットシステムは2016年11月11日、VR(仮想現実)を用いた設計レビュー支援システム「バーチャルデザインレビュー」の販売を開始したと発表した。HTCのヘッドマウントディスプレイ(HMD)「HTC Vive」に対応している。2ユーザー+オペレータで運用する最小構成の価格は500万〜700万円を想定している。
製造業の設計プロセスにおいて、実機試作することなく、3D CADデータやCAEの結果の良しあしを確認できるVRの有用性は認められている。ただしこれまでは、VRシステム単体でも数千万円と高価であること、設置のために広いスペースが必要だったことといった課題があった。
しかし2016年に入って、HTC Viveや「Oculus Rift」といったHMDを用いた安価なVRシステムが登場し、製造業におけるVR活用への期待が高まっている。サイバネットシステムのバーチャルデザインレビューは、このトレンドに合わせて開発されたものだ。
バーチャルデザインレビューは、複数のユーザーがVR空間内で同一の情報を共有し、気軽にコミュニケーションを取り合いながら設計レビューを行えるように、大まかに分けて3つの機能を用意している。
1つ目は「協調作業支援機能」だ。複数のユーザーが、VR空間上に表示された3D 設計モデルを見ながら、コメントや指摘ポイントなどを共有し、コミュニケーションが気軽に取れる「協調作業」を支援する。自身以外のレビュー参加者は、アバターとしてVR空間に登場するので、まるで同じ場所にいるような感覚でコミュニケーションをとることが可能だ。
2つ目は「レビュー結果の記録機能」である。設計レビュー時のレビュワーの声や注意事項をメモで残したり(スマート付せん機能)、レビュワーの動きを記録したりすることができる。後でそれらを再生することも可能だ。
3つ目は、3D CADデータやCAEの処理結果データなどをVR表示用に変換することなく、VR空間にダイレクトに表示させる「ダイレクトVR機能」である。変換の手間がいらいないので、CADツールで形状などを編集すると、即座にその結果をVR空間で確かめることができる。製造業で広く利用されているCADツール、CAEツールについては、ほぼ対応を確認しているという。
ただしダイレクトVR機能は、CADツールやCAEツールなどが要求する性能とHMDへのVR表示に求められる性能をPC側で同時に満たす必要がある。多数のフィーチャを扱う3D CADデータや、メッシュ分割の多いCAEデータなどをそのままVR表示する際には、VR表示の処理速度に影響が出る可能性もある。手間でなければ、デザインレビューの際には、データの軽量化が可能なビュワーを利用する方がよいかもしれない。
VR空間での操作インタフェースは、HTC Viveの専用コントローラー向けに設計されている。最初は取っつきにくいと感じるかもしれないが、10分程度で一連の操作には慣れることができるだろう。
HMDを使ったVRシステムは、VR空間と実空間の相違によって壁にぶつかったりするなどの問題がある。バーチャルデザインレビューでは、あらかじめ壁の位置などを設定しておくことで、そのような問題を回避できるようになっている。
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