「ブリリアントファクトリー」で扱われる取り組みの範囲は広範である。設計システムの統合や、モデルベースエンタープライズの実現、製造システムのオペレーションの最適化、フィールドサービスの進化などを一貫して実現しようというものである。複数のアプリケーション上で一連のプロセスを実装しようというのが特徴で、これらのデータ接続や分析、アプリケーションの基盤となるのが「Predix」である。これらと連携する製造関連ITシステムは、PLM(製品ライフサイクル管理)やMES(製造実行システム)などになる。
ただGEでもこの「ブリリアントファクトリー」が描く世界を完全に実現できているわけではない。沢近氏は「デジタルスレッドにより現実と仮想の世界において製造プロセスを融合できるようになった。こうしたビジョンは以前からGEの中にあったが、IoTの登場により現実のものにできるようになったといえる。現段階ではGEもこの思い描いた世界を実現できてはいないが、こうした方向性を共有し全社で進んでいるところだ」と述べている。
GEでは全世界に400以上の生産拠点を持つが、その内70拠点を「ブリリアントファクトリー」を実践する拠点と定めている。さらにその70拠点の中から10拠点をマザー工場と定め先進的な工場の形の確立に取り組んでいる。ちなみに日本においてもGEヘルスケアの日野工場がこのブリリアントファクトリーのマザー工場として認定されているという。
先述した通り「ブリリアントファクトリー」はGEの社内プロジェクトだが、GEでは同プロジェクトで得られた知見を一部切り出し、GEデジタルを通じて外販する方針を示している。まず取り組んでいるのが「ブリリアントファクトリー」内の製造システムのオペレーションを切り出した「Brilliant Manufacturing(ブリリアントマニュファクチャリング)」の外部展開である。「ブリリアントマニュファクチャリング」はIoTを活用して工場やサプライチェーンの最適化を実現し、スピード向上とコスト削減、業績向上などを目的としたシステムである。
GEデジタルではこの「ブリリアントマニュファクチャリング」を主に3つの段階に分けて展開する。第1段階が「Get Connected」で、これは装置への接続と、リアルタイム性を実現するデータの収集である。単純な稼働監視のレベルだといえる。第2段階は「Get Insights」とし、製造データをデータ構造として体系化し、部材と生産指示のトラッキングやトレーサビリティなどを実現する。人を介するものの、データをある程度統合し、複数データを組み合わせることで新たな知見を得るような段階だといえる。第3段階は「Get Optimized」とし、製造プロセスの最適化のために分析機能を適用。スループットの向上やコスト削減などを実現する。
GEデジタルではこれらの3つの段階に応じたソフトウェアを「ブリリアントマニュファクチャリングソフトウェアスイート」として展開。それぞれの機能をある程度のテンプレートとして短い期間での導入ができるようにして展開する。「MESであれば最短で6カ月、長ければ2〜3年導入にかかるケースがあるが、『ブリリアントマニュファクチャリング』であれば使える機能がある程度まとまっているので『Get Connected』であれば、2週間から6週間で使用可能の段階までもっていくことが可能だ」と沢近氏は述べている。
沢近氏は「GEとしても描く世界の実現はまだ先だが、育てていくということが重要だと考えている。IoTを活用した工場というと『すごいものをやろう』という意識が先に来て二の足を踏むケースもあると思うが、まずはIoTによる『見える化』を始めてみて、そこで出てきた課題に対する取り組みを進めるというような形で進めれば、いろいろとやりたいことが見えてくるのではないか」と考えを述べていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.