GEは、インダストリアルインターネットの基盤として構築するクラウドプラットフォームを「PaaS(Platform-as-a-Service)」として外部に提供する、クラウドサービスの展開を開始する。
米GEは2015年8月6日、クラウドサービス事業に参入することを発表した。新たに展開するクラウドサービスは、ITプラットフォームをサービスとして提供するPaaS(Platform-as-a-Service)となり、新サービスは「Predix Cloud(プレディックスクラウド)」と名付けられている。
GEでは、インダストリアルインターネットとして、同社機器から吸い上げられたデータを基に、稼働監視や予防保全、さらに製品のサービス化(サービタイゼーション)などに活用し、多くの成果を残している。同社はインダストリアルインターネットを展開するために、2011年にカリフォルニア州のサンラモンに研究開発および推進拠点を設置。また、インダストリアルインターネットで利用するデータを蓄積するデータセンターなども順次準備し、グローバルの幅広い地域でインダストリアルインターネットによるサービスが受けられるように準備を進めてきた。
一方、これらのサービスをより容易に受けられるようにGEが提供するソフトウェアプラットフォームである「Predix」を全ての企業に利用可能とし、どの企業でもすぐにインダストリアルインターネットを利用できるオープンな環境を整えてきた。
今回のクラウドプラットフォームの提供は、このオープン化の流れをさらに加速させるものだ。
新サービスのPredix Cloudは、産業用データとその分析に向けて、設計されたクラウドプラットフォームで、高いセキュリティとともに、産業特有のデータ量を保持し多様な産業機器から生成されるデータをスピーディーに取り込み、分析を行えるとしている。商用サービスは2016年に開始するという。
同サービスの特徴は、1つが「機器との接続性」だという。無数の機器がインターネットに接続する時代を迎える中、そのそれぞれで一から接続性を実現する負担は産業機器メーカーにとっては大きい。Predixクラウドはこうした産業機器のためにネットワーク接続をサービスとして提供し、センサーやゲートウェイ、ソフトウェアドリブンの機器をすぐに設定できるようにするという。
また、産業機器では、膨大な数量となる異なるタイプのデータが生み出されることになる。これらに対し、自社のサーバのみでデータを格納するのはストレージの確保などを考えた場合負担が大きい。これらをデータ量に合わせて拡張できる他、GEの産業機器向けのITとOT(Operation Technology)のノウハウを組み合わせたデータの格納技術や分析技術などを活用できる点なども強みだという。
その他、セキュリティ、規制対応、相互運用性などでも強みを発揮し、産業機器メーカーや、各種産業企業が新たにIoT(Internet of Things、モノのインターネット)を活用したビジネスを実現する支援を行う。
GEでは、2014年の売上高の内、約40億ドルがインダストリアルインターネットを核とするソフトウェア関連となっている。2015年の同関連売上高は、1.5倍となる約60億ドルに達すると見込みだという。
IT業界におけるクラウドサービスでは、米アマゾン(Amazon)が主力のインターネット通販事業で利用していたデータセンター運用のノウハウを核に2006年にAWS(Amazon Web Services)を開始。競合他社が運用ノウハウや規模拡張投資などで立ち遅れる中、通販事業での実践から得た知見やリソースを活用し、数百の新たな機能リリースや数十回に及ぶ値下げなどにより、現在はクラウドサービスにおける最大手企業の1つとなっている。GEのPredix Cloudについても、産業機器分野においてAWS同様のプラットフォームとなり得る可能性があり、日本企業などの動向に注目が集まる。
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