現代自動車のレーシングコンセプト、炭素繊維を使わずに軽量化材料技術

BASFとHyundai Motor(現代自動車)が連携を強化している。コンセプトモデルを共同開発した他、2017年に市場投入する量販モデルでもBASFが軽量化で協力する。

» 2016年11月01日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
サーキット仕様のコンセプトカー「RN30」をBASFとHyundai Motorで共同開発した サーキット仕様のコンセプトカー「RN30」をBASFとHyundai Motorで共同開発した(クリックして拡大) 出典:BASF

 BASFとHyundai Motor(現代自動車)は国際プラスチック・ゴム産業展「K Fair」(ドイツ デュッセルドルフ、2016年10月19日〜26日)において、共同開発したサーキット仕様のコンセプトカー「RN30」を披露した。RN30は軽量化と低重心化を図り、コーナリング性能を強化したという。また、2017年に発売するコンパクトカー「i30」の新モデルでもBASFと協力している。

CFRPに頼らない軽量化とは

 軽量化については、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)に頼らないことを重視したという。フェンダーやスポイラーには、硬質インテグラルフォーム「Elastolit」(エラストリット)や反応射出成型システムを活用し、RN30のデザインの意匠を実現したとしている。また、RN30のトランクフロアには、軽量化と製造工程の効率化を両立するため、ポリウレタンセミリジッド発泡体「Elastoflex E」(エラストフレックス)を採用。長繊維強化の表面層とペーパーハニカムで構成しており、軽量化と強度の向上を両立した。

外観内装 RN30の外観(左)と内装(右)。炭素繊維強化プラスチックに頼らずに軽量化を図った点を特徴とする(クリックして拡大) 出典:BASF

 内装の設計では、RN30のデザイナーとヒュンダイモータースポーツが連携し、ドライバーが走行に集中できるよう最適化した。シートの強度と剛性を維持しながら軽量化を図るため、シートシェルとシートパンの部品には、連続繊維で強化した射出成型向けの熱可塑性コンポジットシステム「Ultracom」(ウルトラコム)をBASFが提供。ウルトラコムは熱可塑性プリプレグ、射出成形用ペレット、そして樹脂部品解析ツール「Ultrasim」(ウルトラシム)や部品試験などのエンジニアリングサービスをまとめた繊維強化複合材のパッケージ商品だ。

 また、レーシングカーではエアコンが装着されないため、窓ガラスに近赤外線反射フィルムを使用して車内を快適に保つ。このフィルムは赤外線だけをカットし、光やGPS、電話の信号などは通すという。

 この他、ダッシュボードやドアパネルには、環境負荷に配慮し、寸法安定性に優れた水性バインダーを採用した。質の高い設計を可能にするとしている。車体色は水性塗料「Color Pro IC」の「パフォーマンスブルー」で、洗車が容易になるクリアコート「iGloss」(アイグロス)を組み合わせている。クリアコートは細かなすり傷も低減する。

BASFの技術が車両全体で採用されている BASFの技術が車両全体で採用されている(クリックして拡大) 出典:BASF

量販車でも連携強化

現行の「i30」のハッチバックモデル。2017年初めに新型車の投入が予定されている 現行の「i30」のハッチバックモデル。2017年初めに新型車の投入が予定されている(クリックして拡大) 出典:Hyundai Motor

 現代自動車は、2017年初めに発売するコンパクトカー「i30」でもBASFの素材を多用している。軽量化を図るため、トランスミッションオイルパンやシリンダーヘッドカバー、エアインテークマニホールドなどを樹脂化する。また、デュアルクラッチトランスミッションには、精密鋳造材料よりも50%軽量な金属射出成型向けの材料を使用。触媒には従来の三元触媒を大幅に上回るという「EMPRO TWC」を採用した。

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