九州大学は、恐怖による交感神経活動の脳内ネットワークを明らかにしたと発表した。脳の前帯状皮質が、恐怖と自律神経活動をつなぐ重要な役割を担っていることを確認。これは、不安障害や自律神経失調症の予防や治療につながる成果だという。
九州大学は2016年7月14日、恐怖による交感神経活動の脳内ネットワークを明らかにしたと発表した。自然科学研究機構生理学研究所の定藤規弘教授と、同大学病院心療内科の吉原一文講師らの研究グループによるもので、成果は同年4月19日、「Neuroimage」誌のオンライン版に掲載された。
恐怖刺激などの環境ストレスに対処するためには、交感神経系の活動上昇が必要不可欠だ。最近の脳機能研究では、前帯状皮質や前部島皮質の脳活動が交感神経活動と関連していることが報告されている。しかし、恐怖による交感神経活動に関する脳内ネットワーク(脳領域間の機能的な結び付き)については、分かっていなかった。
そこで研究グループは、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、32人の健常者に対してホラー映画とコントロール映画を視聴した時の脳活動を調査した。fMRIの撮像時には、指先の温度を交感神経反応の指標として測定。MRIの撮像後に、被験者はこれらの映画を再度視聴し、恐怖の程度を3秒ごとに評価した。
その結果、交感神経活動と関連する脳領域として、前帯状皮質(ACC)、両側の前部島皮質(aIC)、両側の前部前頭前野(aPFC)が同定された。また、脳領域間の機能的な結び付きの解析では、ホラー映画を見た時はコントロール映画を見た時と比較して扁桃体(Amyg)と前帯状皮質、扁桃体と前部島皮質との機能的な結び付きが強くなっていた。さらに、恐怖の程度が大きいほど、左扁桃体と前帯状皮質との機能的な結び付きが強くなっていることが明らかになった。
この結果によって、前帯状皮質が、恐怖と自律神経活動をつなぐ重要な役割を果たしていることが分かった。
今回の研究を不安障害や自律神経症状を呈する患者に応用することで、今後、これらの疾患の病態解明や治療技術開発につながることが期待されるとしている。
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