主人公なのに影が薄い位置度と、とにかくキョーレツな輪郭度寸法を実感する! 測定講座(5)(4/4 ページ)

» 2016年07月06日 10時00分 公開
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輪郭度は強烈!

 次に、データムに関連した輪郭度ですが、これは“究極の幾何公差”というくらい強烈なものです。つまり、3D CAD時代の今、設計モデルに対する輪郭度で規制してしまえば、今まで延々と述べてきた数々の幾何公差の適用をするまでもなく、全てを包含してしまいます。その例を、以下に示します。図5は平面度を輪郭度にて表現した例で、図6は何と位置度・平行度・真直度の3公差を輪郭度で表現しているのです。

図5:平面度を輪郭度で表現した例
図6:平行度を輪郭度で表現した例

 今回は測定方法まで踏み込めなかったので、位置公差の測定方法に関しては次回説明します。

 最後に、幾何公差で非常に有効である、複数幾何公差指示の例を示します。幾何公差は互いに独立の原則に従っており、同じ形体に複数の公差指示が可能です。図7は、同じ面に3つの公差指示を行った例で、指示する公差の数に制限はなく、矛盾さえなければいくつでも可能です。

図7:複数幾何公差の指示例

 この効果は、対象である上面の高さに対して、平行度や平面度が欲しいあまり厳しい公差指示をすることなく、位置度を用いて緩くし、かつ平行度、平面度は位置度の公差範囲に包含されているので、公差部品同士の嵌合などの公差解析上は無視できます。これが寸法公差50±0.3mmとの併記であると高さ寸法に加えて平行度、平面度を考慮する必要性が生ずるのです。つまりは、幾何公差の活用は、単なる寸法公差図面からの置き換えではなく、正しい公差設計との併用により生きてくるのです。


 次回は、振れ公差の説明、位置公差、振れ公差の測定方法について触れます。そして、次々回より、いよいよ教材ワークを用いた、実際の測定結果を例示していく予定です。

筆者より:本記事では、嵌合関係のみの公差設計との関係を述べましたが、公差設計は非常に多岐にわたるケースがあります。ぜひ私どもの公差設計の講座と幾何公差の講座の両方を学んでいただき、効果の最大化を図っていただければと思います。

木下悟志(きのした・さとし)

プラーナー 研修推進室 室長 シニアコンサルタント。セイコーエプソンにて34年間勤務。プラスチック応用の開発経験が長く、非球面レンズや超小型ギヤードモーターの開発から量産、マーケッティングまで経験した。また基幹商品であるウオッチ、インクジェットプリンタ、プロジェクターの要素開発にも長く関わった。近年は研究開発部門のマネジメントにおいて開発の意思決定や外部との共同研究・共同開発の方向付けをした。材料開発、機構設計、プロセス開発、計測技術開発と幅広い知見を持つ。2015年より、設計者の能力開発を支援するプラーナーのシニアコンサルタントとして、幾何公差と計測技術を融合したセミナーを創出し、担当している。大手企業をメインに多数の企業で連日セミナーを担当し、実践コンサルも行っている。



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