そんなことを考えながら、さらにお隣をのぞくと、どことなくノスタルジックな空間が広がります。ここには、ボール盤やベンチレース(卓上旋盤)といった、こぶりな機械が並んでいます。
小径部品を加工する際、大きな機械では出せない精度も卓上旋盤で仕上げることで出せます。卓上旋盤ならではの加工もあるのです。
加工後の検査には、やはり3次元測定器は欠かせません。また、傷や打痕が製品に影響を及ぼす可能性を持つ部品は、顕微鏡を使った外観検査もぬかりなく行います。
こちらが材料倉庫です。アルミ合金を筆頭に、真鍮(しんちゅう)、銅、チタンの非鉄系から、SS、S45C、SUS304等の鉄鋼系に加え、POMやABSといった樹脂までがきっちり整頓されて並んでいます。
ここだけではなく工場内全般にわたって、人が頻繁に行き来するところに余計なものが置かれていません。5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)が行き届いているとお見受けしました。とても快適な工場です。
目下のテーマは、新規導入した3D CAMを使いこなし、その活用による加工品目をさらに拡充するとのこと。そして設備投資も積極的に行い、これからのモノづくりを担う若手の育成にも力を注いでいきたいとのことでした。
3年前の突然の不幸を乗り越えたチームワークといい、「前進しよう」とする姿勢といい、「まさにスポーツチームのスポンサー企業にふさわしい会社だなぁ……」と、感心いたしました。
おかげさまで、設計者は設計値通りの部品を手に入れることができ、組み立てて納品して稼ぎにつなぐことができるわけですから、気持ちよく作業を進めていただくために、毎回登場する「図面とデータの不整合問題」について、速やかに対策を考えなくてはいけませんね。
藤崎 淳子(ふじさき じゅんこ)
長野県上伊那郡在住の設計者。工作機械販売商社、樹脂材料・加工品商社、プレス金型メーカー、基板実装メーカーなどの勤務経験を経てモノづくりの知識を深める。紆余曲折の末、2006年にMaterial工房テクノフレキスを開業。従業員は自分だけの“ひとりファブレス”を看板に、打ち合せ、設計、加工手配、組立、納品を1人でこなす。数ある加工手段の中で、特にフライス盤とマシニングセンタ加工の世界にドラマを感じており、もっと多くの人へ切削加工の魅力を伝えたいと考えている。
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