慶喜氏は常に工場に新しいものを積極的に取り入れ、毎年のように設備を増強していました。創業当時は数台の旋盤だけだった設備も、仕事量の増加に合わせて台数を増やし、加工品目拡充のためにマシニングセンタを新規導入するなど、いつしか汎用、NC合わせて20台以上を所有するまでに至りました。
ところが、機に乗じるさなかの2013年3月4日、慶喜氏は現場での作業を終えて最寄りの温泉施設へ休憩に向かう途中で大動脈解離を発症し、そのまま帰らぬ人となりました。それまで社長の判断と采配によって統制が取れていた現場は、この日突然指揮者を失ったのです。そして、この突然の不幸が、現場スタッフを成長させました。
安曇野ヤマダテクニカルには日々続々と仕事が入ってきます。ですから、現場スタッフには社長の急逝を悲しむ時間はありませんでした。工場長いわく、「社長が亡くなったことでこれまでの信用を落とすわけにはいかない。判断できる人がいないなら、ひとりひとりが自ら考え自ら動いて、目の前の仕事をこなすしかない。とにかくその思いで一致団結して乗り切りました」。とのこと。そんな劇的なエピソードをもつ現場に入ってみましょう。
工場に入ってすぐ出迎えてくれるのはヤマザキマザック(Mazak)のマシニングセンタたち。その奥へ進むと、同じくMazakのNC旋盤があります。他に、森精機のNC旋盤もありますが、ざっと見渡した印象では、現在の安曇野ヤマダテクニカルの加工設備はMazak機を主力にしているようです。
これが、MazakのNC装置、「マザトロール」の操作パネルです。
こういった対話式NC装置は、Gコード入力を必要としません。オペレータが図面を見ながら画面の指示に従って、材料、使用工具、加工条件などの情報を入力することによって自動的にツールパスを生成し、その通りに機械は動きます。
ちなみに、Gコードについて、基本的なことは「ママさん設計者がやさしく教える「CNCフライス超入門」(5):まずはリハーサル! GコードをCNCソフトに取り込む」で説明しました(蛇足!?)。
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