変わってこちらは汎用旋盤です。汎用旋盤とはいえ対話式の簡易NC装置が付いているので、この機械は俗に「半NC旋盤」と呼ばれます。簡易NC装置のおかげで、ある程度の自動運転が出来ることと、段取り換えが面倒な加工も楽にできます。ただし刃物台は自動で回転しないので、工具をチェンジしたいときは刃物台を手で回します。
隣の部屋には長い機械が数台並びます。これがNC自動旋盤です。
先に紹介した2つの旋盤では、いずれも必要な長さに切断された材料をセットして加工しますが、NC自動旋盤では、2メートル以上の長い材料をそのまま機械に格納して、プログラムに従って自動的に送り出して加工します。材料交換や段取り換えの手間が省けるので、長時間の無人運転が可能です。ですから継続的な量産向きの機械なのです。今現在同社では、月産1万5000個ほどの小径の部品がこのNC自動旋盤で量産されています。
機械は米粒以下のΦ2から最大Φ20まで、加工長さも最大2000mm程度まで対応できるため、針のような細いピンから長尺のシャフトまで、幅広い部品が加工できます。そのためにこれだけのコレットチャックが準備されています。
自動旋盤では、このように長いままの材料を寝かせて並べます。加工がスタートすると、後は自動的に材料が繰り出され加工され切り離され、終端はスクラップとして排出されてボックスにたまります。
これが終端の端材です。まだ使えそうですが自動旋盤では尺不足で使えません。
ところで、昔は自動旋盤というとカム式が多かったのです。カム式自動旋盤とNC自動旋盤の違いは、からくり人形とロボットの違いにちょっと似ています。どちらも似た動きをするけれど、からくり人形は複雑な機構部品の組み合わせでそれを行うのに対して、ロボットはモータとプログラムを用いてコンピュータ制御で行います。いつもと違った動きをさせたい場合、ロボットはプログラムの書き換えでOKですが、からくり人形は機構部品を交換しなくてはいけません。
世の中がスピード化を求めてモノづくりのデジタル化が進む中で、設計現場では電卓とドラフターがCADに移行していったのと同じく、加工現場でも生産管理のデジタル化が進み、徐々にNC自動旋盤に入れ替わっていったようです。そのため、カムを作る会社そのものがどんどん消えてしまい、現役で稼働しているカム式自動旋盤の将来が心配です……。
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