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» 2016年06月09日 10時00分 公開

幾何公差の本領発揮! データムを使った姿勢公差と測定寸法を実感する! 測定講座(4)(3/4 ページ)

[木下悟志/プラーナー,MONOist]

傾斜度と角度公差

 さて、次に傾斜度です。これは寸法公差のみの図面では見かけることが少ないと思います。まず、公差域の違いを復習します。図6は第2回で寸法公差と幾何公差の公差域の違いを説明するために用いた図です。

図6:寸法公差と幾何公差の公差域の違い

 ここに示すように、幾何公差では角度そのものへの公差指示でなく傾斜の度合いを幅による公差域で表します。従って、大きなサイズの形体への公差値の指示には気を付ける必要があります。角度指示では公差域が末広がりなので良いのですが、傾斜度指示では先に行くとどんどん厳しい公差となります。もちろん、角度指示でないと設計意図が表現できない場合、例えば光学機器での光の反射方向を規制したい場合など、では傾斜度でなく角度公差で指示した方が適切ですから幾何公差にこだわる必要はなく、双方の長所を生かして使い分けていくことが有効です。

 傾斜度にも図6で示したような、おなじみ面への指示とは別に、図7の軸直線基準での指示、図8のような方向を定めない公差域の指示があります。

図7:軸直線基準の傾斜度指示と公差域
図8:方向を定めない傾斜度指示と公差域

幾何公差の利点と現場の抵抗感解消

 ここまで来ると、ようやく中心形体への規制や多彩な公差域にも馴染んできていただけたでしょうか。

 さて、今回のポイントとして、幾何公差の特徴でもあり、大きな課題でもある測定すべき場所について触れてみます。従来の寸法公差図面は測定が2点間距離測定であり、特に注記などで指定しない限り、測定点は測定者に一任されており、時には測定者が規格に入るように測定点を選んで測定していてもOK、としていました。

 しかしながら、幾何公差図面においては、今まで説明してきたことからお分かりかと思いますが、設計者が図面で特に指示しない限りは指示された面(平面、円筒面)、軸、線、の全面、全長さが規制の対象となります。その意味では、設計者としては曖昧さを排して自分の欲する品質の確保がしやすいことになります。

 一方で、作る側は、従来測定していなかったところまでの保証を求められ、また測定方法も3次元測定が求められます。このことが、「幾何公差は測定工数が増える」「測定手段がない」「歩留りが悪くなる」、といった現場の声につながってきます。

 ここでは今一度、以下の視点で再考してみましょう。

  1. 今までは基準の取り方など、都度設計者に確認していなかったですか?
  2. 問題が起こるたびに測定点の再確認などしてデータの取り直しをしたり、時には既に現物がなく途方にくれたりしていなかったですか?
  3. 発注側と受注側の測定値に差が生じて、両者で再確認することが繰り返されていないですか?

 上記に対する幾何公差の利点と、先に述べた現場サイドの抵抗感への解消への提言の一端を述べてみたいと思います。

 まずは、利点ですが、1〜3とも幾何公差では曖昧さがなく、誰が見ても明確に、かつ世界共通の記号で表現するので解消されます。自ずと不明な点も鮮明になります。当然、図面を描く人、読む人、それぞれが同じルールで、それぞれの立場で図面を通じて濃密にコミュニケーションすることの必要性は従来と同じです。この、曖昧さが排されたことで、設計と製造現場でのやりとりが繰り返される、曖昧さから生じた設計変更や金型修正といった手戻りといわれるもの、特栽(特別採用)といった設計図面の規格から外れているが許容して流動することなどは減少する可能性が高いです。

 次に、現場サイドの抵抗感のことですが、この連載をよく読んでいただくにつれて、実は「幾何公差が正しく描きこまれた図面」こそ、現場の方々が昔から望んでいた図面であることに気づいていただけると思います。まさに、「食わず嫌い」そのものだということで、残念でなりません。私どもでは、今まで設計サイドの方々に向けて幾何公差の普及を図るセミナーを主として行ってきましたが、上記の課題を踏まえて、現場サイドの食わず嫌い、設計者の「図面を受け取る側の拒否反応を考えると、自信を持って幾何公差を描きこめない」、といった声に応えるようなセミナープログラムも用意して展開を始めています。

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