医療現場では、秒単位の時間を争う救命救急や、急性期の検査増加、一人一人のスタッフにかかるケア負担の増大、人材育成に割く時間の不足といった課題を抱えている。これに対し、GEヘルスケア・ジャパンは、人とモノをつないで病院内の課題を解決するインダストリアルインターネットを活用したサービス「ブリリアント・ホスピタル」を展開していく。
従来の情報システムでは「何が起こったか」までしか分析できなかったが、「何が起きているか」を見ることはできるようになった。
インダストリアルインターネットを病院経営に使うことによって「これから何が起こるのか」「それに対して何をすべきなのか」まで明らかにし、病院内の人とモノに「規範的な知見」を提供する。
「インダストリアルインターネットは、電力業界など医療向け以外で既に実績を積んでいる、確実で信頼性の高い技術だ。データを分析するアルゴリズムは専門集団によって開発される。これに加えて、顧客の状況理解や、日本で技術開発する強み、医療分野の知識をデータ解析に織り込むところまで1社で担うことができるのはわれわれの強みとなる」(GEヘルスケア・ジャパン 執行役員 サービス本部長の藤谷京子氏)。
インダストリアルインターネットは、医療機器の保守管理も効率化するという。
藤谷氏は「従来は壊れてから修理にかけつけるというものだった。これは画一的で、必ずしもお客さまのニーズを満たしていなかった。救急医療に重点を置いているのに、医療機器がネックでスピードを落としかねないということがあった。実際に三重県の伊勢赤十字病院の放射線科で先行導入した事例では、日勤帯の予定修理時間も40%削減し、緊急修理の時間はゼロに抑えることができた。予防と修理は別物という考えによって実現した」という。
疾患別アプローチでは、認知症に焦点を当てる。認知症は患者数が増加し続けており、65歳以上の15%が認知症患者で、寝たきり状態になる主な原因となっている。認知症に関わる社会全体の負担は14兆5000億円に上るとの試算もあり、根本的な治療薬の開発が求められている。
GEヘルスケア・ジャパンは、認知症のうち半数以上を占めるアルツハイマー病の早期診断ソリューションを提案する。具体的には、アルツハイマー病の診断の指標となるアミロイドの蓄積を可視化する診断薬と、PETトレーサーの合成設備、撮像から解析まで対応したソフトウェアを組み合わせる。
これにより「従来は患者の死亡後に解剖で確定診断するしかなかったアルツハイマー病の診断が容易になる。また、アミロイドの蓄積状態を細かく把握できるため、症状が出る前に行動療法や家族の準備を進めることができる。アルツハイマー病の早期診断が可能になれば、治療薬の開発も進む」(GEヘルスケア・ジャパン 営業本部長の伊藤浩孝氏)としている。
同社は、こうした設備を備えた認知症の基幹病院と地域のクリニックが連携することにより2025年モデルに向けた包括ケアの体制にも近づくと見込んでいる。
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