L18直交表に基づいてデータを取ったら、SN比と感度を算出します。計算は以下の図のようになりますが、こちらも関数の入ったExcelデータをあらかじめ用意しておくと便利です。
SN比と感度を算出したら折れ線グラフを作って、「要因効果図」にまとめます。
上図では○が高いところにあるほど安定している(SN比が大きい)ということになります。外径が大きいほど安定していることが分かりますね。なので、安定性を求めるのであればレギュレーションギリギリのφ20mmをなるべく狙った方がいいのかもしれません。
他、要因効果図から見えた特性は以下です。
材質(重さが関わるところ)は安定性にはそれほど関係していません。これは、ステンレス、真ちゅう、タフピッチ銅の比重の違いが、他のパラメータの影響に比べて小さかったからだと考えられます。例えば、アルミ、ステンレス、タングステンのように比重を変えた場合は、安定性への影響は大きくなることが予想されます。
今度は、実験の結果が信頼に値するかどうか評価していきます(再現性の確認)。最適条件と比較条件を選定し、SN比と感度を計算してみます。最適条件は一番結果が良さそうな組み合せ、比較条件は全組み合せの中で中程度に良さそうな組合せを選びます。交互作用が大きそうな場合は、一番結果が良さそうな組み合せと一番悪そうな組み合せを選ぶ場合もあります。そこからSN比と感度を推定します。
さらに最適条件・比較条件のコマを組み立て、再実験した結果をまとめます。
判定基準は、推定値と実験値の利得の誤差がどれくらいあるかどうかです(下記)。
今回は「○」です! これで、安定してよく回るコマの設計条件が絞り込めました。
今回は品質工学における直交表を用いた実験法を駆け足で紹介しました。品質工学を学ぶ初めの一歩になればうれしいです。直交表は設計など工学系でなくても、アンケート作成などさまざまな分野で応用できるので、ぜひ勉強して活用してみてください。
また品質工学の直交表や計算については、関数入りExcelシートや計算ソフトウェアがWeb上で無償配布されています。こちらを利用してみてもよいと思います。予算があれば、前述の中原さんが作った「コマ実験セット」を利用するのもよいですね。
1、2回で、信州コマ倶楽部のコマ設計手法を紹介してきました。言うまでもありませんが、この記事を参考に設計手法を勉強して「強いコマ」を作ったとしても、コマ大戦で必ず勝てるわけではありません。
勝ち負けには、コマの出来栄えの他にもさまざまな要因があり、複雑に絡み合っています。当然、運もあります。そもそも、勝つことが全てではありません。だからこそ、コマ大戦ではさまざまな人間ドラマが生まれてきたのでしょうね。
ともあれ今回の記事がきっかけで新たなチャンピオン誕生……、なるか? グッドラック!
中原健司(なかはら・けんじ)
1968年長野県駒ケ根市に生まれる。1991年にタカノ株式会社に入社、オフィス家具の開発に従事。1994年に3次元CAD・CAEの社内プロジェクト発足に伴い、技術部へ異動し、構造解析、3次元設計の支援や品質工学等の開発ツールの導入を行う。2010年には次世代事業の立ち上げや技術開発を目的とした部署に異動し、圧力分布測定システム、農業分野を担当、現在に至る。
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