2億曲に対して2億通りに適切なイコライザーを設定するのは、車載情報機器のオーディオ機能としては処理の負荷が重すぎる。そのため、楽曲の雰囲気と年代、ジャンルを基に2億曲を8万種類のカテゴリーに分け、そのカテゴリーに最適なイコライザーに調整する。
調整の基準となるのは、8万種類のカテゴリーの中から人気や知名度を基に選んだ代表曲だ。イコライザー無調整の代表曲について各周波数の音量を分析し、基準値とした。代表曲と同じカテゴリーの曲は、この基準値に合わせてイコライザーを調整する。
ダイナミックEQは「決して原曲の録音状態を否定するものではないし、曲を破綻させることがないようにしている。よりよい雰囲気で音楽を楽しむための機能」(グレースノート シニアディレクターのスティーブ・マテウス氏)と説明している。必要に応じてダイナミックEQの機能をオフにしたり、イコライザーによる音量の大小の差を小さくすることもできるという。組み込みシステムだけでなく、クラウド連携でも対応する。
これにより、音にこだわりがある人もない人も、オーディオ任せで今まで以上に音楽の雰囲気を味わうことができる。
2億曲のデータベースはラジオに対しても強みを発揮する。ラジオで流れる楽曲のタイトルを知るには、曲名が読み上げられるのを待つしかない。歌詞の一部を頼りに探すこともできるが、運転中には難しい。
グレースノートの楽曲データベースを使った「MusicID-Radio」は、ラジオで流れる楽曲の冒頭数秒間を基に分析し、曲名とアーティスト名、CDのジャケット写真などを特定して車載情報機器の画面に表示するものだ。楽曲と同時にラジオ番組の出演者の音声が流れている場合や生演奏を除くと、ラジオで流れている95%の楽曲を認識できるという。
また、ラジオで流れる曲に対しても、イコライザーの自動設定「ダイナミックEQ」を使えるよう開発を進めている。
ラジオで聞いている曲が気に入った人のために関連曲を表示するレコメンド機能もある。関連する曲は、ストリーミングサービスやドライバーがクルマに接続している携帯音楽プレーヤーなどから検索する。
ラジオを聞く目的は音楽だけではない。スポーツの実況中継でひいきのチームの戦況を確認する人も多いだろう。ただ、ラジオはアナウンサーが読み上げる結果を受け身で待たなければならないため、何分か聞き続けなければ知りたい情報は得られない。
グレースノートは、ラジオの放送と連動した試合の進展の情報も提供していく。チームのスコアや得点した選手、F1などのレースであれば順位も車載情報機器の画面に表示できるようにする。ラジオはアナログデータで、自動で試合結果をテキスト化することは難しい。このため、試合結果はグレースノートのスタッフが人力で更新する。
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