Qt Groupとデジタルハリウッド大学大学院は、「自動運転・無人運転時代における次世代ユーザー体験の実現に向けて ソフトウェアデファインド・ビークル時代のソフトウェア開発と人材育成の新たな展開〜」と題した合同パネルディスカッションを開催した。
Qt Groupとデジタルハリウッド大学大学院は2025年2月4日、東京都内で「自動運転・無人運転時代における次世代ユーザー体験の実現に向けて ソフトウェアデファインド・ビークル時代のソフトウェア開発と人材育成の新たな展開〜」と題した合同パネルディスカッションを開催した。
今回の合同パネルディスカッションでは、Qt Group 第二営業部 部長の小山田博史氏と、デジタルハリウッド大学大学院 デジタルコンテンツ研究科 特任教授でビジュアル・グラフィックス 取締役 新規事業担当兼RCGソリューション事業担当の橋本昌嗣氏がパネリストとして登壇し、アルファコンパス 代表CEOの福本勲氏がモデレーターを務めた。
SDV(ソフトウェアディファインドビークル)では、自動車の開発においてソフトウェアの果たす役割がより大きくなっている。EV(電気自動車)市場で優位なポジションにあるテスラ(Tesla)やBYDは、車載ソフトウェアのアップデートによりADAS(先進運転支援システム)などの機能向上を可能とするなど自動車のSDV化も積極的に進めている。
これらのADASが今後より高度化して自動運転技術に進化することが想定される中、自動車とドライバーの関係性も変化してくる。既に、ヘッドユニットやメーターなどに大型のタッチスクリーンが搭載されるようになっているが、自動運転技術よってドライバーが必ずしも運転をする必要がない場合には、これらのタッチスクリーンによって提供される機能も変わってくる可能性がある。福本氏は「第4次産業革命で知られるインダストリー4.0を引き継ぐインダストリー5.0では『ヒューマンセントリック(人間中心)』がキーコンセプトの一つになっている。これは、日本のSociety 5.0でも重要なコンセプトに挙げられている。SDVにおいて、このヒューマンセントリックを実現する上で必要なものは何か」と問いかける。
デジタルハリウッド大学大学院で「アーキテクチャ言論(コンピュータ)」を担当科目とする橋本氏は、同大学院内で「Visual Media Intelligenceラボ」を組織している。橋本氏は「当ラボでは、自動運転/無人運転時代の自動車のUI(ユーザーインタフェース)を研究テーマの一つにしている。自動運転/無人運転が進むことで車内体験が変わるが、そこでUIは非常に重要な役割を果たす。また、今後自動車メーカーのグループ化が進めばプラットフォームの共通化も進むが、その一方でブランドの訴求やアイデンティティーも必要になる。エクステリアやインテリアだけでなく車内体験も差別化する上で、やはりUIは重要だ」述べる。
UI開発フレームワークである「Qt」を展開するQt Groupは同大学院の研究活動に協力している。小山田氏は「オープンソースで展開されているQtは2025年で30周年を迎える。商用ライセンスも提供しており、70以上の業界/産業で利用されている」と強調する。自動車業界では、Mercedes Benzの最高級EV「EQS」や現代自動車の「Genesis」ブランドの他、日本国内の自動車メーカーにも広く採用されている。「自動車メーカーのデジタルコックピットの差別化にQtは貢献している」(小山田氏)という。
日本の自動車メーカーにおけるヘッドユニットやメーターなどのUI開発は、1つのアプリに対して1つのスクリーンであることが多かった。しかし、スクリーンの大型化によって分割ウィンドウが当たり前になっている。さらに、差別化を目指すデジタルコックピットでは、より大きい画面、より多様なアプリ、より多様なレイアウトを実現可能なウィンドウマネジメントがトレンドになる。小山田氏は「EVで有力な企業が先行しているものの、日本の自動車メーカーもフォローアップしつつある」と説明する。
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