アウディが次世代マイルドハイブリッド、環境性能と走行性能を両立電動化(1/2 ページ)

アウディは次世代マイルドハイブリッドシステム「MHEV plus」の詳細を発表した。

» 2025年01月31日 11時30分 公開
[齊藤由希MONOist]

 アウディは2025年1月28日、次世代マイルドハイブリッドシステム「MHEV plus」の詳細を発表した。MHEV plusはパワートレインジェネレーターとベルト駆動式オルタネータースターター、リン酸鉄リチウムイオン電池で構成される電源電圧48Vのマイルドハイブリッドシステムだ。パワートレインジェネレーターは部分的なモーター走行や駆動力のアシストに対応しており、快適な運転とCO2排出量の削減を両立するとしている。

 MHEV plusは2024年7月発表の「A5」「Q5」に採用されており、前輪駆動と四輪駆動のどちらにも搭載可能だ。「A5 2.0 TDI」の場合は最大で10g/km、また、V型6気筒エンジンを搭載した同モデルの「3.0 TFSI」では最大で17g/kmの燃料節約が見込めるという。MHEV plusはニーズが異なる米国市場には提供しない。

MHEV plusを搭載した「A5」[クリックで拡大] 出所:アウディ

低速はモーターのみで走行、速度が上がるとモーターで駆動力アシスト

 MHEV plusは、スタートストップ機能の進化による快適性向上、エンジンの動力を使わない惰性走行、エネルギー回生、駐車や低速時のモーターのみによる走行、モーターによる駆動力のアシストなどがメリットだとしている。都市内の低速走行や渋滞中などはエンジンを長時間停止できるという。エアコン用電動コンプレッサーによってエンジン停止中もエアコンの作動を継続する。

 モーターのみで走行している間、ドライバーのペダル操作やアダプティブクルーズコントロールで必要とする出力が一定値を超えるとエンジンが始動し、駆動力を引き継ぐ。エンジンの始動条件は、バッテリーの充電率(SOC)や速度によって決まる。速度が上がるほどエンジンが動作する場面が増える。

 従来のマイルドハイブリッドシステムではベルト式オルタネータースターターのみを使用していた。これに対し、MHEV plusのパワートレインジェネレーターはトランスミッションの出力軸に直接取り付けられており、最大18kWの電力で駆動をアシストする。また、最大230Nmのトルクを発生させ、車両の発進時から駆動力として直接利用できる。発進直後の数メートルでの加速が向上されるという。

 時速140kmまでパワートレインジェネレーターが動作し、それより上の速度域では内蔵のドッグクラッチで駆動系から切り離される。出力シャフトにおいて最大5550rpmに達するため時速130~140kmに対応する。パワートレインジェネレーターの重量は21kg。トランスミッション出力部とモーターの統合を既存モデルの範囲内で行うため、周辺部品に若干の変更を加えたとしている。

MHEV plusで採用したパワートレインジェネレーター[クリックで拡大] 出所:アウディ

 ベルト駆動式オルタネータースターターはエンジンの始動やバッテリーへの電力供給を行う。ベルト駆動はピニオンスターターと比べて静粛性が高く、エンジンの始動を早められるとしている。また、ベルト駆動式オルタネータースターターはエンジン停止中にエネルギーを回収する他、再始動時に最適なシリンダー位置を確保する。

 リン酸鉄リチウムイオン電池の容量は1.7kWh。最大放電出力は24kWだ。アウディとしては、マイルドハイブリッドシステムで初めてリン酸鉄リチウムイオン電池を採用する。

 MHEV plus搭載モデルでは、ブレーキペダルを強く踏み込んだ場合のみ機械式ブレーキが作動するが、それ以外は回生ブレーキによって減速する。統合ブレーキ制御システムとマイルドハイブリッドシステムの組み合わせによって実現した。パワートレインジェネレーターは回生ブレーキを通じて最大25kWのエネルギーを回生する。

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