前述のように、スケルトニクスの存在はパワードスーツの1つの新たな可能性を示すものといえる。現在、ビジネス化されているパワードスーツのほとんどは介護用、重作業補助用だ。
しかし一方、パワードスーツというと、一般には映画「アイアンマン」のようなパワーを手に入れることができる、そんなイメージが強いのも事実だ。白久氏は、この「一般の人のパワードスーツに対する期待と実際の技術が追いついていないということ」を課題として挙げる。
パワードスーツは歴史的に見ても50年以上の歴史がある研究分野だが、特に注目されたのは愛知万博でのHAL-5(サイバーダイン)だ。米袋を持ち上げたり、女性を持ち上げたりといった画像が流れた。技術的にも既にかなりの研究が進んでいる分野だが、その力や動作を直接体験できる機会がないまま、期待だけが大きくなっている。
白久氏 僕も他社のパワードスーツや自社の試作を幾つか身に付けたましたが、超人的な力を発揮するものではありません。ビジネス的に成り立つレベルでの実現を考えると、「すごく重いものを持ち上げられるより、物を持ち上げて運ぶという作業を複数回行う時に最終的な負担を減らす」といった調整を行う必要が生じます。そこが“実用的なパワードスーツ”の落としどころです。パワードスーツという言葉のイメージと実体について、一般の人の理解と技術を一致させていく必要があるのかなと思っています。
実際、パワードスーツでビジネスを展開する各社が、ビジネスとして自分の会社をどうやって回すのかという判断により、最終的に腰痛防止や重作業補助という形に落ち着いたというところなのだろう。
白久氏は現状を、技術的にまだこういうものなんだとしっかり理解してもらったうえで、「じゃあ、何ができるのかということをあらためて考えてみましょう」という状態だと分析する。
白久氏 イメージ先行ではなく、地味な部分ですが、そこをしっかりやっていく必要があると思っています。
弊社の立ち位置として、正直な意見が言える立場だと思うのです。大きなバックがない、大きな株主もいない、自己資本で全部やっています。とはいえ、ある程度認知されていて、いままでも製品も作ってきている。そういった立場、会社があることによって、みなさんの理解と技術の差を埋められる意見がもしかしたら言える立場ではないか。いろいろなジレンマを抱えつつも、正直にパワードスーツを広めていける立場なんじゃないか、と。
いままでのイメージにとらわれずに、パワードスーツをどう展開していくのかということもしっかり考えていきたい。直接伝えるというよりは、僕らの次の展開の重要な視点として組み込んでいく形、何か形にして伝えていくということになると思います。
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