家電とロボットの境界をどう捉え、新しい製品をどう投入していくか。ロボットの市場を“ホーム”に拡大していく鍵はそのあたりにありそうだ。
Cerevoが2016年1月に米国で行われた「CES 2016」で発表したホームプロジェクションロボット「Tipron(ティプロン)」は、部屋の中を自走し、目的の場所に着くとおもむろにヘッドを上げ、壁や天井に映像を投影する。頭部にデプスセンサー、IR距離センサーを搭載し、壁に対して自分がどういう面に位置しているかを計り、ピント、台形補正などは自動で調整する。
自動走行の他、スマートフォンからのリモコン操作も可能。その操作は非常にシンプルで、基本的には場所、そして何を投影するかを選ぶだけだ。キッチンで冷蔵庫のドアにレシピを出す、ベッドルームの天井に交通情報を出す、というように。
いつ投影するかの設定も可能だ。いま、この瞬間に実行するのか、何かインターネット上のトリガーを使って実行するのか。例えば「山手線にトラブルがあったら、リビングルームの壁に交通情報を出す」なども可能になる。トリガーと実際の情報の表示をどう組み合わせるかというのはもう少し調整する予定だという。Android OSで動作しており、投影する映像はUSBやHDMI経由の他、Wi-Fiでインターネットから直接コンテンツを取得することもできる。
使用しないときの折りたたんだ状態から、投影時に自らヘッドを持ち上げ、上に伸びていく様子はロボットアニメの変形シーンそのもの。Tipronは家電という位置付けなのか、ロボットなのか? 家電ベンチャーのCerevoが、なぜいまロボットなのか? Tipronを出す狙いをCerevo 代表取締役社長の岩佐琢磨氏に伺った。
ルンバに代表される「お掃除ロボット」はすっかり一般の家庭にも定着した。いまでは、国内メーカーからも同じような製品が出ているし、「CEATEC JAPAN 2015」で全自動洗濯物折りたたみ機「laundroid」が発表されるなど、新たな“家電”(=これまで人間が行ってきた家事を代行する機械)も登場している。
何がロボットなのか、家電なのかの定義の話になるが、岩佐氏は「ロボットを作っているというイメージではない」という。
岩佐氏 ヒューマノイドシミュレーション型とそうでないものにはけっこう溝があって、DARPA(米国防高等研究計画局)がやっているような、人間の四肢のシミュレーションへ究極に特化したロボット、それはそれで存在すると思いますが、そうじゃないものは家電なんじゃないかというのが僕らの見方です。
なので、家電メーカーが対外的にロボットという言い方をするような製品がうち(Cerevo)から出てくるというのは、ごく自然に捉えています。
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