ヒトとの相乗効果はロボットを新しい次元に引き上げる、MMSE金岡氏に聞く搭乗型巨大ロボットの作り方(後編)インタビュー(1/2 ページ)

ヒトの動きがロボットの動きになるロボット「MMSEBattroid」を開発したMMSE 金岡氏が次の実現を狙うのが、4メートルクラスの搭乗型ロボットだ。実現に向けた技術的な課題はなく、各分野の協力を得られれば5年以内に実現するだろうという。

» 2015年06月08日 07時00分 公開
[大塚実MONOist]

 テレビ「リアルロボットバトル」やニコニコ超会議に登場した、ロボット「MMSEBattroid」を開発し、リアルロボットバトルでは自ら操縦していたのが、立命館大学チェアプロフェッサーでマンマシンシナジーエフェクタズ 代表取締役社長の金岡克弥氏だ。前編に引き続き、金岡氏へロボット開発の苦労話、今後のビジョンなどについて話を聞く(・ヒトとの相乗効果はロボットを新しい次元に引き上げる、MMSE金岡氏に聞く搭乗型巨大ロボットの作り方(前編))。

――ニコニコ超会議に出ていたMMSEBattroid ver.0.1は、リアルロボットバトル出場時のver.0から形が変わったように見えましたが?

金岡氏: MMSEBattroidは番組出演後も改良を続けています。例えば、リアルロボットバトルの本番では、Oculus Riftはほとんど使いませんでした。機能としては完成していて使える状態ではあったのですが、なぜ使わなかったかというと、Oculus Riftの視野にスレーブロボットの腕が全く入っていなくて、非常に操作しづらかったからです。作って操作して初めて、腕が見えない状況で正確に操作するのは至難の業だと気が付きました。ロボットの完成がギリギリだったので、それを改良する間もなく、バトルに臨まざるを得ませんでした。

 バトル後に落ち着いてから、カメラの位置を調整し、腕を前側に移動する改良をしたので、今はOculus Riftを装着して腕を操作できるようになっています。それ以外にも、バトルで明らかになった問題点を解決する改良を、多数取り入れています。

photo 2015年4月末に開催された「ニコニコ超会議2015」の「超ロボットエリア」での「MMSEBattroid ver.0.1」

――Oculus Riftを使えばすごく臨場感がありそうですね。

金岡氏: MMSEに視覚は欠かせません。Oculus Riftはうってつけのデバイスでした。現時点のMMSEBattroidにおける実装では、解像度の荒さや立体視ではないといった不満があり、まだ肉眼の方が臨場感は高いのですが。しかし、それは単にリソースの問題であり、いずれ解決可能です。早晩、Oculus Riftを使った方が便利になるはずです。単純に画像を表示するだけでなく、拡大縮小などの画像処理も可能ですし、AR機能を追加して全天周囲モニターのようにも使えるでしょう。

目指すは搭乗型の巨大ロボット

――操縦方法も変更されていましたね。リアルロボットバトルでは立って操縦していたのに、ニコニコ超会議では座って操縦するスタイルになりました。

金岡氏: はい。それもバトル後の改良点の1つです。座って操縦するスタイルにしたのは、将来的にコクピット化を目指しているからです。「ロボットに乗って操縦する」ことが1つの目標であり、これは、いわゆるテレオペレーション、テレイグジスタンス、テレプレゼンスなどの技術と異なる、私たちのMMSEの特徴となっています。搭乗型ロボットの実装においては身長5メートルくらいが適切なサイズだと考えています。ニコニコ超会議にも来ていた実物大イングラムよりも、一回り小さい程度ですね。

――実現に向けて、何か技術的な課題はあるでしょうか。

金岡氏: 特に無いと思います。もちろん、実際に作り始めれば細かい問題は出てくるでしょうが、本質的に「この技術が足りない」という部分は、もはや見当たりません。アクチュエータにこだわる必要は無く、5メートルサイズならば電動でも油圧でも構いません。

photo 立命館大学チェアプロフェッサー マンマシンシナジーエフェクタズ 代表取締役社長 金岡克弥氏

 このサイズなら自動車と同じスケールですから、自動車の先端技術の恩恵も享受できます。エンジンを積んで駆動源をハイブリッド化することも容易ですし、電気自動車用の高性能バッテリーも利用できるでしょう。燃料電池さえ積めるかもしれない。もちろん先端ロボット技術は私たちが提供します。各分野の専門家の協力さえ得られれば、特に技術的な困難は無いと見ています。これも予算によって前後するでしょうが、5年後くらいには実現可能だと考えています。

――子どものころに見たロボットアニメなど、影響を受けたものはありますか?

金岡氏: 影響はありますね。それなりに好きですし、今でも見ています。「ガンダム」「マクロス」「ボトムズ」に始まり、「攻殻機動隊」「アップルシード」「エウレカセブン」「グレンラガン」など派生作品を含め一通り見ました。マスタースレーブ操縦系の観点で興味深かったのは「フルメタル・パニック」ですね。今は「シドニアの騎士」を見ているところです。

 私からすれば、搭乗型ロボットを本気で実現しようとする研究者が見当たらないのが、不思議なのです。私たちの世代だと、小学生のころからアニメで搭乗型ロボットを見て育ってきたはずなのに。

 でも、はっきり断っておかなければなりませんが、私は単に「子どもの頃から夢見ていた、憧れのロボット」だから作りたいと思っているわけではありません。なので、「ロマン」と言われるのは好きではありません。

 搭乗型ロボット、パワー増幅マスタースレーブシステム、MMSEといった、私が目指すロボット技術にはそれぞれ、それを目指すべき合理的・実用的な理由があります。通信・制御の速度と信頼性。あるいは、理論化は難しい要素ですが、直感的な操作を容易にする臨場感。責任を明確化する操縦者のヒモ付け、クラッキング・ジャミング対策、開発・製造・運用コストなど、幾つかの重要な理由で、遠隔操作型でなく搭乗型を基本とすべきだと考えています。遠隔操作型を採用にする場合には、原発内での作業のような、搭乗型のメリットを捨てるに値する理由が必要です。

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