モデリングの失敗例としては、(1)蜘蛛の巣のモデル図、(2)集中型のモデル図、(3)追跡できないモデル図、(4)矛盾があるモデル図、(5)効率が悪いモデル図、(6)仲間内だけのモデル図、(7)相反する目的を持つモデル図、(8)モデル化と抽象化を勘違いしているモデル図などがあります。ここの事例は第4回の記事を参照してください。
他にも失敗例はあります。重要なのは失敗だったのか、成功だったのかをちゃんと区別することです。このため、失敗例のパターンを収集し分類することも重要になります。
モデリングが失敗する直接の原因には、(1)無目的モデリング、(2)曖昧モデリング、(3)評価なしモデリング、(4)無理やりモデリング、(5)1回こっきりモデリングがあり、モデリングそのものでない原因としては、(6)駄目モデラー、(7)駄目プロセス、(8)駄目教育があります。失敗原因の詳細は第4回の記事を参照してください。
そしてこの失敗原因が見つかったら、それを排除するようにしてください。これで少なくともモデリングの失敗からは遠ざかることができます。
モデリングが目的を見失ってしまうのは、モデリングの効果が実感できずに、モデリングが単に儀式的に行われていることが原因です。多くの場合、その根底にはモデル図よりもプログラムの方がいいと思っている考えが存在します。またプログラムと比較してモデル図はコストパフォーマンスが(実際は悪くありませんが)悪いと思われているのも原因です。この対策としてはモデリングの効果を体感させることが必要です。
効果(御利益)を実感してこそ、それを崇拝することができます。欠点を知ることも大事ですが、まずは効果を知ることが先です。効果を実感できれば、それをモデリングの目的とすることができます。
曖昧なままモデリングをするのは、情報を聞き取れなかったことが主な原因ですが、その他には誰も確定した情報を持っていない、これから決めるようになっていた、そして情報が曖昧であるということにすら気づいていなかったなどがあります。対策は曖昧な場所は曖昧だということを明記することで、曖昧な部分を他のものと分離することです。
曖昧であることを知っているだけでも、曖昧であることを知らないよりはマシです。さらに曖昧な場所をどうするかを見通せるなら、さらにモデリングで使えるでしょう。曖昧さとの戦いはモデリングで越えなければならない壁です。
モデル図を再利用するためには、モデル図を抽象化して再利用できるようにしなければなりませんが、そのコストを掛けられない、掛ける必要性を感じていないことが再利用できない原因になります。もっと悪いことに、そもそもモデル図の再利用という考え方そのものがない場合もあります。これにはモデリングは再利用されてこそ意味があるということを学ぶ/教える必要があります。
しかし一方、優れたモデルは何の変更もせずにそのまま再利用できるものもあります。この場合は再利用しているという意識もあまりないでしょう。これがモデル図の再利用の理想です。空気のように再利用していることを感じさせないものが一番コストの掛からない再利用です。しかしこのようなモデル図はあまりないので、いろいろと工夫して、意識的あっても構わないので、再利用を促すようにします。
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