今まで、モデル図の失敗例を見てきました。心当たりのある失敗例もあったかも知れません。失敗の直接的な原因についても、各失敗例のところで少し考えてきました。そこでここでは、あらためて、なぜモデリングが失敗するのか、その直接的な原因を探っていきます。最初にこれから紹介するモデリングの失敗の直接的な原因をまとめたものを図11に示します。
モデリングが失敗する一番の原因はこれです。モデリングの目的を見失っているのです。だから、モデル図が蜘蛛の巣になったり、追跡できないモデル図になったり、相反する目的を持ったモデル図を作るのです。
目的もなく、ただ義務だけで、儀礼的に作るだけになってしまいます。そのくせ、レビューで攻撃をかわしたいために、色々とモデル図に追加するのです。さらに言えば、儀礼的作っているという意識のあるモデラーはまだましです。こんなものを作っているのは無駄であるということを悪いと知りながらモデリングしている人はまだ大丈夫です。直しようがあります。
より問題があるのは、悪いことであると意識せずに、モデリングそのものが目的になって、一生懸命モデリングしている人です。モデル図を描くことが目的になっている人です。まるでプログラムのようなモデル図を描くことを生きがいにしている人です。
そしてこれの解決方法は、連載の第1回目で言いましたが、目的を絞ること、これが結局はモデリングの目的を明確化することに繋がります。このモデル図の使命は何か、このモデル図の生存価値は何か、それから考えてみてください。モデリングは目的でなく、絞り込んだ目的を達成するための手段の1つです。
モデリングとは与えられた情報を整理し、不要なところは捨てて、必要なところのみを描くものです。そのためには入力情報がちゃんとしていなければなりません。入力が不明確で曖昧な箇所があると、当然、その箇所はモデリングはできませんし、当たり前ですが、モデル図に描けません。その結果、ホットスポット(*)という名前の下、抽象化せざるを得なくなります。そしてその結果、世の中はホットスポットだらけになります。これはもちろん良くありません。
ホットスポットを発見すること自身はモデラーにとって腕の見せ所です。しかしそれは入力がいい加減であることの免罪符にはなりません。入力を明確にしてこそのホットスポットなのです。
この曖昧モデリングが行われると、前で紹介した追跡できないモデル図になったり、矛盾があるモデル図になったり、効率が悪いモデルになります。色々なアンチパターンの発症につながります。
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