曲げても性質が変化せず、正確に測定できるフレキシブル圧力センサー医療機器ニュース

東京大学は、曲げても正確に測定できるフレキシブル圧力センサーを発表した。ナノファイバーを用いることで、半径80μmまで折り曲げても、圧力センサーとしての性質が変化しないことが確かめられた。

» 2016年02月08日 08時00分 公開
[MONOist]

 東京大学は2016年1月26日、曲げても性質が変化せず、正確に測定できるフレキシブル圧力センサーを開発したと発表した。同大学大学院工学系研究科の染谷隆夫教授、リー・ソンウォン博士研究員らの研究グループによるもので、成果は同年1月25日に、英科学誌「Nature Nanotechnology」オンライン速報版で公開された。

 近年、ウェアラブルエレクトロニクスの装着感を低減するため、生体に密着する柔らかい圧力センサーの開発が進んでいる。しかし、柔らかい素材でできた圧力センサーは、曲げたりよじれたりすると、変形に伴うひずみのためにセンサーの性質が大きく変化してしまい、正確に計測できなくなるという問題があった。

 同研究グループは、圧力を感知する素材にナノファイバーを用いて、センサーの厚みを2μmまで薄くすることに成功。これにより、曲げても性質が変化せず、正確に測定できるフレキシブル圧力センサーを開発した。直径300〜700nmのナノファイバー同士が繊維のように絡み合う構造を形成し、50mg/m2と薄くて軽量な、多孔性の素材を可能にした。透明で、貼り付けても目立たない。また、同圧力センサーは、半径80μmまで折り曲げても、圧力センサーとしての性質が変化しないことが確認されたという。

 さらに、同研究グループは、多点計測できるフレキシブル圧力センサー(多点センサー)も作製した。同センサーは、12×12の格子状に圧力センサーを並べたもので、全体で144点の圧力を計測できる。全体の厚みは8μm。これを、膨らませた風船の表面に載せ指で風船を押しつぶしたところ、指で圧力をかけたところだけ、圧力の分布を正確に計測することができた。

 この研究成果を活用することで、今後、柔らかな曲面上に本センサーを装着して圧力を測定することが可能になるという。例えば、圧力を正確に検出できるゴム手袋を用いて、これまで感覚に頼っていた乳がんのしこりの触診をセンサーで定量化するデジタル触診など、ヘルスケア、医療、福祉、スポーツなど多方面への応用が期待される。

photo 白い風船の上に、多点の圧力センサーのシートを密着させ、指で大きく変形させた。圧力センサーの素材は透明だが、多点化したセンサーから圧力データを読み出すための回路で使われている電極や配線は透明ではなく、金色に見えている。
photo 指に巻いたセンサーアレイ。非常にフレキシブルで曲面にもピッタリとフィットする。しわなどの変形があっても、精度良く圧力を計測できる。

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