本連載ではマイコンを用いて、で紹介した各モーターに対応したプログラミングを行っていくわけですが、マイコン開発環境は多くの読者におなじみのArduinoを用います。本連載ではサンプルのスケッチ(プログラム)を示して解説を行いますので、LED点滅のプログラミングができる程度の知識が必要です。Arduinoの基本的な使い方については、MONOistにも記事がたくさんありますのでそちらを参考にしてください。
Arduinoといえば最もポピュラーなのがUNOタイプですが、本稿では小型でブレッドボードに直接挿せるタイプのNanoを用います。ピンはほぼ互換ですのでUNOタイプでもそのまま使えるとは思いますが、これから購入しようと思う方はNanoタイプをお薦めします。実態配線図などはNanoを前提としたものを案内する予定です。
本連載では上に示したようなモーターをマイコンから制御する方法を解説していきますが、最も基本的な半導体デバイスであるトランジスタやFET(電界効果トランジスタ)を用いて、モーターを制御する回路を基本的なところから作製します。
専用ICやモジュールを使えば簡単にモーターを制御することは可能ですが、それではモーターが動く仕組みまでは理解できません。またうまく動作しなかったとき、どこが原因なのか追究することもできないでしょう。応用に結びつけるため、基礎を学んでいきたいと思います。
トランジスタは半導体の最も基本的なデバイスの1つで、一般にトランジスタと云えばバイポーラトランジスタを指します。モーター制御用の専用ICであっても、トランジスタなどで組んだ回路を集積して1つのICとしてパッケージングしているだけです。ですからトランジスタさえあれば、それらの組み合わせでモーター制御用の専用ICの代わりになる回路を作製することが可能なのです。
トランジスタは電流の増幅作用があります。マイコンのGPIO(汎用入出力)端子ではLEDを点灯させる程度の電流しか出力できませんが、一般的にモーターの駆動にはそれの数十から数百倍の電流が必要です。そのためにGPIOの電流をトランジスタで増幅させ、モーターを駆動させます。
FETは電界効果トランジスタとも呼ばれます(先ほどのバイポーラトランジスタに対してユニポーラトランジスタと呼ぶこともあります)。
FETもトランジスタと同様、モーター駆動に必要な電流を供給するために用いられますが、バイポーラトランジスタが電流でモーター(負荷)駆動する電流を制御するのに対して、FETは電圧でモーター(負荷)に流す電流を制御します。本連載では比較的大電流が必要な場合にFETを用います。
ブレッドボードも利用します。はんだ付けなしでも回路製作が可能であり、回路の改変も容易です。回路を実験する場合、部品を変更して最適な部品の組み合わせを試すときなどにとても便利です。部品の再利用も可能ですからとても経済的です。
ブレッドボードには行方向に数字、列方向にアルファベットが割り当てられています。本連載では、この行の数字と列のアルファベットを組み合わせてブレッドボードの穴の位置を特定します。(1 a)と表示すれば写真だと左上の穴を指示したことになります。
ブレッドボードはあらかじめ内部で配線が施されています。(1 j)(1 i)(1 h)(1 g)(1 f)の各5つの穴は互いに内部で配線されています。それが(30 j)(30 i)(30 h)(30 g)(30 f)まで同様に配線されています。図の溝を挟んで下の面も同じように配線されています。図の上下に赤いラインと青いラインがありますが、それらはそれぞれ列方向が互いに配線されています。これらの列は主に電源として用いるられることが一般的です。
今回は実際にマイコンでモーター制御を行うにあたり、扱う予定のモーターと利用する電子デバイスについても簡単に説明しました。次回から実際にモーター制御を行う回路とプログラムについて解説していきます。
第一弾は最も安価で入手可能な「直流ブラシ付きモーター」のマイコン制御について解説します。お楽しみに。(次回へ続く)
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