「動くモノ」の制御ができると手を動かした実感がわくものです。この連載では、マイコンを用いたモーター制御の基礎を学んでいきます。
これから何回かに渡ってマイコンによるモーター制御を解説していきます。小型模型用モーターの代名詞「マブチモーター」に代表されるブラシ付きモーターから、ラジコンやロボット工作に欠かせないサーボモーター、また3Dプリンタの制御に用いられるステッピングモーター、そして電動無人機(ドローン)などに採用されているブラシレス3相モーターの制御まで、モーターが活躍する場所はますます広がっています。その仕組みと制御方法を何回かに分けて解説していきたいと思います。
モーターは「電気エネルギーを物理エネルギーに変換する装置」と考えることができ、用途や仕組みによっていくつかの種類が存在します。まずはこれらモーターについて基本的な解説をします。
直流ブラシ付きモーターの代表はいわゆる「マブチモーター」でしょう。小型の模型や玩具などによく用いられることから、私たちが子供のころから慣れ親しんできたモーターです。
乾電池などの電源をつなぐだけで回転するため、電源オン/オフ以外の制御回路は必要ありません。電源をつなぐだけで回転するのはとても便利なのですが、逆にマイコンなどからの制御でスピードを調整したり、回転方向を切り替えたりしようとすると、意外とてこずるモーターでもあります。
原因はその構造にあります。詳しくは各回で詳しく述べますが、コイルの極性を回転角度によって切り替えるためにブラシという接点を用いています。この接点が回転中にコイルと通電したり遮断したり一秒間に何度も繰り返されるのです。そのためこの接点からマイコンには大敵となるノイズが発生するのです。また回転の始動時に数アンペアの大電流が流れるため、マイコンと電源を共通にしていたりすると、電圧降下を起こしマイコンに予期せぬリセットがかかったりすることがあります。
直流ブラシ付きモーターの回では、マイコンで制御する際のこれらの不具合が起きる原因やその対策について解説します。マイコンでの制御を考えると短所もありますが、とにかく入手性が良いのと値段が安いのは大きな魅力です。ぜひこの機会に使いかたをマスターして、いろいろな局面で応用してみてください。
サーボモーターといえばフィードバック制御が可能なモーターの総称で用いられることもありますが、本連載では写真のような模型用サーボモーターを対象として扱います。
サーボモーターはRC(ラジオコントロール)模型で船や飛行機の舵や車のステアリングを制御するために欠かせないモーターです。ただ他のモーターと異なり360度以上無限に回転する構造にはなっていません。ある角度を基準にプラス/マイナス90度回転するというような動作をします。
このモーターの制御にはPWM(パルス幅変調)を用います。サーボモーターの回ではマイコンによるPWMの生成方法やそれを用いたモーターの制御方法を解説します。
ステッピングモーターは、3Dプリンタなど精密な制御が必要な場面では欠かせないモーターの1つです。制御する端子が複数あり、それらに順序正しくパルスを与えることで回転を制御することができます。そのために「96ステップで1回転する」といった、細かな制御が可能です。サーボモーターはフィードバックで細かな角度の制御を行いますが、ステッピングモーターはフィードバックの必要のないいわゆる開ループ制御(*)が特徴です。
ステッピングモーターの種類にはコイルの構造に応じてバイポーラ型とユニポーラ型が存在します。ステッピングモーターの回ではマイコンで制御するためのパルスの作りかたからバイポーラ型およびユニポーラ型を制御する回路について解説します。
筆者が最近このモーターをよく目にするのは、ドローン(特にマルチコプター)のプロペラを回転させるモーターとしてよく使われているためのようです。
ブラシレスモーターの特徴は構造が非常に単純なことです。ブラシレスの名前の通り、回転するローターをブラシで支えず電流の切り替えによってローターを回転させる構造となっています。
ブラシ付きモーターの様に物理的に接触する接点がないため、回転によって消耗する部品点数が少なく、メンテナンス性が高いのも特徴です。また、比較的小型で出力の高いモーターを作ることも可能です。
その反面、回転させるためには3本の端子に適切なタイミングで電力を供給する必要があるので、マイコンなどある程度インテリジェントなデバイスが必要となります。それは逆に言えば3端子に供給する電力やタイミングを制御することでモーターに対してさまざまな挙動をさせることが可能となります。むしろマイコンで制御するには好都合なモーターなのかもしれません。
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