日本版インダストリー4.0の鍵となる“緩やかな標準”、実現に向け19のWGが始動スマートファクトリー(2/4 ページ)

» 2015年11月25日 07時00分 公開

現在19のWGが活動中、その内容を一挙公開

 “緩やかな標準”作りに向け、現在IVIのもとでは19のWGが業務シナリオの策定に向けた活動を進めている。業務シナリオとは、それぞれの企業において共通していると思われる現状や課題、解決手段、そして目指す姿を示したものだ。シンポジウムでは活動中間報告として、各WGの活動内容や目的などが紹介された。以下ではその概要について個別に紹介する(カッコ内はWG名、以下はWGの主査企業名)。

「保全データのクラウド共有とPDCA」(主査企業=NEC)

 設備保全は不要な設備の停止を防ぎ、工場の生産能力を維持し、さらに向上させることを最大のミッションとする。そのためにクラウド上で保全データの共有を図ることやIoT技術の活用による早期復旧や故障・トラブルの予防保全の実現などのメリットについて検討を進めている。

「企業を超えた生産指示MES」(小島プレス工業)

 労働人口の減少が中小企業を中心に大きな課題となっている。こうした人材不足を解消するためにIoTを活用し、生産指示情報を共有して発注企業と受注企業が協力してタイムリーな対応を行えるようにする。また、工場内で省人化に役立つロボットの活用の検討も進め、特に工場における人型汎用ロボットの利用事例を日本から発信することを目指す。

「人と設備の共働工場における働き方の標準化」(トヨタ自動車)

 作業者の突発的な休暇などによる不足人員を補うため、作業者スキルDB(データベース)、健康判断システム、配置シミュレーションシステムなどのIoE(モノと人)技術をつなげることでフロアマネジメント支援に取り組む。さらに、人づくりと持続的成長をサポートしていくインタフェース(スキル、健康管理、人材育成など)の標準整備を進める。

「遠隔地のB2Bアフターサービス」(ニコン、アビームシステムズ)

 B2B部品の故障修理、消耗品交換、点検、操作サポートなどのアフターサービスを遠隔地の顧客に提供する際のサービス業務の効率化など、顧客の利用価値向上を目指す。特にリモートメンテナンスや共同コールセンターの活用で、メーカーから離れた地域で活動するユーザーでも、十分にサービスが受けられる体制作りや、遠隔地でもモノづくりに付加価値を与えられるサービスの提供を目指す。

「設備ライフサイクルマネジメント」(矢崎部品)

 製造設備の導入から廃棄までのトータルコストパフォーマンスの向上を目的とする。生産工程を構成する設備間に寿命差がある場合や、設備寿命と製品寿命に差がある場合など、設備ライフサイクルにおける課題を検討していく。さらにIoT活用などによって新たな価値を作る設備ライフサイクルマネジメントの手法を検討し、課題解決のための提案も行う。

「設備連携によるリアルタイムな保全管理」(オムロン)

 設備連携によるリアルタイムな保全管理により、ダウンタイムをゼロにし、品質面での製品価値の向上を目指す。設備故障の予兆をとらえ、品質バラツキの最小化・高精度加工を実現するために、生産時の設備・製品の変化点のデータ、さらに加工・組み立てラインの設備と設備、設備と人との関係性を保持する上で必要なデータの収集を行う。

「リアルタイムなデータ解析と予知保全」(オークマ)

 突発的な長期設備停止を避けるためには、設備の異常や故障の予兆をとらえて計画的に保全活動を行う必要がある。しかし設備故障や不良品の発生を予知するのは難しく、設備故障の検出は熟練作業者のノウハウに頼っている部分がある。そこで設備のセンサー情報・製品品質情報、保全履歴などのデータベースとビッグデータ解析技術を利用し、リアルタイムに設備故障や不良品発生を予知することを目指す。

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