ダヴィンチのように汎用性の高い大型ロボット手術支援システムは、事業化に成功すれば収益性で強みを発揮できる反面、いったん有害事象に見舞われると膨大な安全対策費用が掛かり、事業の存続に営業を及ぼしかねないリスクも抱えている。このような背景から、米国の手術ロボット関連スタートアップ企業の中には、消化器系、眼科系など、特定の領域向けのコンパクトなロボット手術支援システムの開発に絞り込むところが増えている。
また新たな課題として、手術ロボットを制御するソフトウェアの開発/保守に関わるライフサイクル管理や、ロボットと外部システムをネットワーク接続した時のサイバーセキュリティ対策がクローズアップされている。
例えば2015年5月、ワシントン大学の研究班が、手術ロボットのサイバーセキュリティ脆弱性に関する研究成果を公表している(関連情報、PDFファイル)。技術的には、制御系システムと情報系システムの融合という、モノのインターネット(IoT)の共通課題が関わっており、安全対策も発展途上段階にある。
日本でも「医工連携」で注目される手術ロボットだが、国内企業をみると、基礎研究や臨床開発に人材が集中し、医療機器としての承認を受けて上市された後の安全対策まで手が回っていないところが多い。市販後安全対策でITのメリットをどう生かせるかは、官民共通の課題といえよう。
笹原英司(ささはら えいじ)(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)
宮崎県出身。千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
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