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» 2015年10月08日 11時00分 公開

米国発サービスモデル視点のIoT標準化と健康医療分野の関わり海外医療技術トレンド(4)(2/3 ページ)

[笹原英司,MONOist]

IoTの枠組みのベースは「ドメイン」「ファセット」「アスペクト」

 そして、CPSフレームワークを適用させる際、重要な役割を果たすのが、「ドメイン」、「ファセット」、「アスペクト」の3要素である。図2は、CPSフレームワークの3要素の関係を整理したものである。

図2 図2 CPSフレームワークの「ドメイン」「ファセット」「アスペクト」(クリックで拡大) 出典:NIST CPS-PWG「Draft: Framework for Cyber-Physical Systems Release 0.8」(2015年9月)

 「ドメイン」は、CPSの適用領域であり、草案では、広告、航空宇宙、ビルディング、都市、コミュニティ、消費者、防衛、災害レジリエンス、教育、緊急対応、エネルギー、エンターテインメント/スポーツ、環境モニタリング、金融サービス、ヘルスケア、インフラストラクチャ(通信、電力、水資源)、レジャー、製造、科学、ソーシャルネットワーク、サプライチェーン/流通、交通、気象が挙げられている。

 中でもヘルスケアについては、草案の「ウェアラブルコンピューティングとIoT」のパートで、フィットネス/ウェルネス/生活トラッキングアプリケーション、インフォテインメント(例:スマートウオッチ、仮想現実ハンドセット、スマートグラス)、ヘルスケア/医療(例:持続血糖モニター、ウェアラブルバイオセンサー)が挙げられるなど、注目度が高い。

 次に、「ファセット」は、システムエンジニアリングのプロセスで特定された責務を含む、CPSの考え方であり、課題への取り組みのために設定された活動/成果が含まれる。ファセットには、以下の通り、概念化、現実化、保証の3つがある。

  • 概念化のファセット:CPSのハイレベルの目標、機能要件、組織に関わる活動を捕捉し、包括的な成果として、CPSの概念モデルを提供する
  • 現実化のファセット:CPSの実現に向けたトレードオフ分析、詳細なエンジニアリング設計/シミュレーションなど、望ましいシステムの詳細なエンジニアリング設計、製造、導入、運用に関わる活動を捕捉する
  • 保証のファセット:現実化のファセットで構築されたCPSが、概念化のファセットで構築されたモデルを満たすという確信を得るための取り組みであり、設計、政策、法律、規制上の重要な要件に取り組むために必要な要求、論証、証拠の評価が含まれる

 そして、「アスペクト」は、分野横断的な課題をハイレベルでグルーピングしたものである。アスペクトには、機能、ビジネス、人間、信頼、タイミング、データ、境界、構成、ライフサイクルの9つがある。

 今回の草案で、健康医療分野のリファレンスアーキテクチャモデルは示されていないが、参考までに、図3は、製造業のIoTシステムのリファレンスアーキテクチャモデルを例示したものである。

図3 図3 製造業のSystem-of-Internetのリファレンスアーキテクチャモデル(例)(クリックで拡大) 出典:NIST CPS-PWG「Draft: Framework for Cyber-Physical Systems Release 0.8」(2015年9月)

 CPS-PWGでは、今回の草案で提示された包括的なCPSフレームワークをベースに、「語彙とレファレンスアーキテクチャ」「ユースケース」「サイバーセキュリティとプライバシー」「タイミングと同期」「データ相互運用性」の各分科会レベルで、具体的な成果物の策定作業を行い、順次公開する予定だ。今後、健康医療を取扱ったアーキテクチャやユースケースが出てくることに期待したい。

 日本でIoTというと、デバイスやセンサー端末といったハードウェア製品をイメージするが、欧米の場合、プロダクト(ハードウェア、ソフトウェア)とプロセスを組み合わせたサービスとしてIoTをモデル化することが多い。健康医療分野においても、臨床現場の業務プロセスを分析/可視化した上で、サービスモデルを検討するアプローチが一般的だ。

 このようなIoT利活用サービスのモデリングプロセスを効率化/標準化するために、「ドメイン」、「ファセット」、「アスペクト」の3要素から成るCPSフレームワークを有効活用する方策が考えられる。当然、自動車産業向けの「ISO/TS 16949」、航空宇宙産業向けの「AS9100(JIS Q 9100)」、医療機器産業向けの「ISO 13485」、電気通信産業向けの「TL 9000」など、IoTに関わる業種/業界向けの独自の要求事項を付加したセクター規格との整合性を確保することが前提条件となるが、ITシステムのアプローチと制御システムのアプローチの連携への期待は大きい。

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