そして、CPSフレームワークを適用させる際、重要な役割を果たすのが、「ドメイン」、「ファセット」、「アスペクト」の3要素である。図2は、CPSフレームワークの3要素の関係を整理したものである。
「ドメイン」は、CPSの適用領域であり、草案では、広告、航空宇宙、ビルディング、都市、コミュニティ、消費者、防衛、災害レジリエンス、教育、緊急対応、エネルギー、エンターテインメント/スポーツ、環境モニタリング、金融サービス、ヘルスケア、インフラストラクチャ(通信、電力、水資源)、レジャー、製造、科学、ソーシャルネットワーク、サプライチェーン/流通、交通、気象が挙げられている。
中でもヘルスケアについては、草案の「ウェアラブルコンピューティングとIoT」のパートで、フィットネス/ウェルネス/生活トラッキングアプリケーション、インフォテインメント(例:スマートウオッチ、仮想現実ハンドセット、スマートグラス)、ヘルスケア/医療(例:持続血糖モニター、ウェアラブルバイオセンサー)が挙げられるなど、注目度が高い。
次に、「ファセット」は、システムエンジニアリングのプロセスで特定された責務を含む、CPSの考え方であり、課題への取り組みのために設定された活動/成果が含まれる。ファセットには、以下の通り、概念化、現実化、保証の3つがある。
そして、「アスペクト」は、分野横断的な課題をハイレベルでグルーピングしたものである。アスペクトには、機能、ビジネス、人間、信頼、タイミング、データ、境界、構成、ライフサイクルの9つがある。
今回の草案で、健康医療分野のリファレンスアーキテクチャモデルは示されていないが、参考までに、図3は、製造業のIoTシステムのリファレンスアーキテクチャモデルを例示したものである。
CPS-PWGでは、今回の草案で提示された包括的なCPSフレームワークをベースに、「語彙とレファレンスアーキテクチャ」「ユースケース」「サイバーセキュリティとプライバシー」「タイミングと同期」「データ相互運用性」の各分科会レベルで、具体的な成果物の策定作業を行い、順次公開する予定だ。今後、健康医療を取扱ったアーキテクチャやユースケースが出てくることに期待したい。
日本でIoTというと、デバイスやセンサー端末といったハードウェア製品をイメージするが、欧米の場合、プロダクト(ハードウェア、ソフトウェア)とプロセスを組み合わせたサービスとしてIoTをモデル化することが多い。健康医療分野においても、臨床現場の業務プロセスを分析/可視化した上で、サービスモデルを検討するアプローチが一般的だ。
このようなIoT利活用サービスのモデリングプロセスを効率化/標準化するために、「ドメイン」、「ファセット」、「アスペクト」の3要素から成るCPSフレームワークを有効活用する方策が考えられる。当然、自動車産業向けの「ISO/TS 16949」、航空宇宙産業向けの「AS9100(JIS Q 9100)」、医療機器産業向けの「ISO 13485」、電気通信産業向けの「TL 9000」など、IoTに関わる業種/業界向けの独自の要求事項を付加したセクター規格との整合性を確保することが前提条件となるが、ITシステムのアプローチと制御システムのアプローチの連携への期待は大きい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.