ドイツの自動車メーカーが、ここにきて一気にプラグインハイブリッド車(PHEV)の展開に力を入れ、大量投入を計画している。これまでダウンサイジング、ハイブリッド(ディーゼル含む)、PHEV、電気自動車なども検討してきたが、ここまで一気呵成の投入は驚きだ。各国法規制をその理由に挙げる報道もあるが、果たしてそれだけなのだろうか。
ドイツの自動車メーカーがプラグインハイブリッド車(以下、PHEV)の品ぞろえを増やしている。それも半端なレベルでない。最大手のVolkswagen(フォルクスワーゲン)は主力の「パサート」や「ゴルフ」にPHEVを追加するとともに、それ以外の車種も追加を検討中である(編注:「フランクフルトモーターショー2015」では主力SUV「ティグアン」へのPHEV追加を発表した)。
BMWはこれまでの「i8」に加え、「X5」、「2シリーズ」、「3シリーズ」、「7シリーズ」にもPHEVを追加する。Daimler(ダイムラー)のメルセデス・ベンツブランドも、主力車種の「Cクラス」を含めて、車両名称に“e”が付くPHEVを2017年までに総計10モデル投入する方針を示している。では、ここにきてなぜ急激にドイツ自動車メーカーはPHEVに力を入れ始めたのであろうか。
これらの動向については、既にメディアでも言及されており、理由として欧州で規制が強化されるCO2排出規制や、米国カリフォルニア州のZEV(ゼロエミッションビークル)規制を挙げている。
果たしてそれだけであろうか。各国の法規制は以前からアナウンスされており、今に始まったものではない。元自動車メーカーにいた人間からすると、時期が近づいたとはいえ、これだけを理由とするには違和感を覚える。彼らは、もっと長期的な視点から戦略を組み立ててきているのではないだろうか。そこで、彼らの頭の中を考え、筆者なりにシナリオを読み解いてみた。
自動車メーカーにとって、次世代パワートレインの基軸をどこに置くかは大きな命題である。1つ1つの投資額が膨大となり、開発費用のみならず、開発人員、開発時間、設備投資など、自動車メーカーの事業戦略を左右する。それだけに、次世代としてどのようなパワートレインを選択するかは、経営陣として慎重に検討したであろう。
ではどのように考えたのであろうか。あくまで仮説にすぎないが、これまでの状況から4つのシナリオを想定したのではないかと考えた。
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