伝送線路解析にはIBISモデルが広く使われています。
IBISモデルを使った伝送線路解析では、解析精度が問題にされることもありますが、モデルのバージョンアップに従い、徐々に精度の問題も改善されてきました。
圧倒的な解析速度、モデルの普及と入手の容易さ、扱いのやさしさなど、IBISモデルの優位性は数多くあります。
しかし、急速に普及してきたPCI ExpressやISB 3.0のSI解析に対して、IBISモデルではうまくいきません。
IBISモデルでは、プリエンファシスの解析がうまくできません。IBISモデルには、前のビットデータと次のビットデータが同じデータが連続しているのか、ハイ/ローが切り替わっているかで、ドライバのモデルを切り替える機能がありません(図8)。
また、IBISモデルはデジタル信号の伝送線路解析を目的としているため、周波数特性を持ったフィルタ回路のモデル化ができません(図9)。
このため、受信側にフィルタ特性が規格化されているPCI Express Gen3の解析でも、不自由があります。
さらに、損失が大きな長い配線では、配線の途中で信号の減衰が大きくなり、ドライバ側で信号波形を整形して送信しても、配線の途中で信号が判読不能なほど減衰してしまいます(図10)。
このため、配線途中でリピータと呼ばれるは形成回路を挿入し、信号の伝送距離を延長します(図11)。
IBISモデルはドライバ、またはレシーバの2端子モデルしか定義できません(図12)。
しかし、リピータは入力と出力を持った4端子回路となります(図13)。
このような入力と出力、両方を持った素子の解析を行う場合、IBISモデルでは、2つの回路に分割しなければ解析できません(図14)。
しかし一般にこのような素子の特性は、入力信号に応じて出力信号が変化するような特性を持っています(図15)。
2つの回路に分けたIBISモデルを使った解析では、入力も出力もデジタル信号を対象としているので、入力に応じて出力特性が変化するような素子の解析はできません。
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