簡単なポータブルアンプの製作を目標として、電子回路に親しんでもらうこの連載。今回はポタアンのキモ、トランジスタの役割について学びます。はんだ付けまであと少しですよ!
簡単なポータブルアンプの製作を通じて、抵抗やコンデンサの読み方といった、初歩的な電子回路についての知識を学び、電子回路に親しんでもらう連載「電子工作“超”入門」の第6回をお届けしたいと思います。
さて、今回はいよいよ心臓部に入ります。使われているトランジスタの解説です。まずは連載第1回で示した、今回作成するポータブルアンプの回路図を確認しましょう。
■使用する部品
回路図での部品番号 | 仕様(名称) | 備考 | 価格(1個あたり) |
---|---|---|---|
R1、R4 | 150Ω | 1/4Wカーボン抵抗 | 5円 |
R2、R5 | 3.9Ω | 1/4Wカーボン抵抗 | 5円 |
R3、R6 | 51Ω | 1/4Wカーボン抵抗 | 5円 |
C1、C4 | 47μF | 16V耐圧電解コンデンサ | 10円 |
C2、C5 | 0.01μF | 積層セラミックコンデンサ | 10円 |
C3、C6、C7 | 470μF | 16V耐圧電解コンデンサ | 10円 |
TR1、TR2 | 2SD1590 | ダーリントントランジスタ | 50円 |
JK1、JK2 | 3.5mm小型ステレオミニジャック | 基板取付用 | 50円 |
―― | 電池ボックス(単三形×2本) | 端子ピンタイプ | 50円 |
―― | ユニバーサル基板(72x47mm) | 片面ガラス | 60円 |
・電子工作“超”入門(5):抵抗とコンデンサ(その2)「コンデンサ」を知る
・電子工作“超”入門(4):抵抗とコンデンサ(その1)「キルヒホッフの法則」を知る
・電子工作“超”入門(3)電子工作的な観点でコンデンサを知ろう
・電子工作“超”入門(2):電子工作の基本のキ、抵抗を知ろう
・電子工作“超”入門(1):シンプルなポタアンを理解しながら作るための第1歩
ここではNPN型のトランジスタ「2SD1590」を2個使っているので「2石のポータブルアンプ」ということになります。トランジスタの接続方法にはNPN型とPNP型の2種類あることも第1回で紹介しました。そこではまた、自由電子が電荷を運ぶN型半導体と、電子が不足している「正孔」を持つP型半導体をつなぎ合わせていることも紹介しましたね。電子はN型からP型に流れますので、電流はP型からN型に流れることになります。回路図の表記ではベースからエミッタ側に矢印が引かれているものがNPN型、反対にエミッタからベース側に矢印が引かれているものがPNP型です。
さて、ここからが今日の本題です。この回路ではトランジスタが重要な役割をしていると先ほど述べましたが、それはどういう意味なのでしょうか。
トランジスタが果たす役割はずばり、電流の制御です。今回使用する2SD1590のようなNPN型トランジスタの場合、ベース(B)→エミッタ間(E)に流す電流Ibeを変化させると、コレクタ(C)→エミッタ(E)間の電流Iceも変化するのです。
よく「トランジスタの役割は増幅」と言われますが、勝手に電流量が大きくなっていくというよりは、CとEの間に流れる電流Iceの管に、BとEの間の電流Ibeが蛇口の栓となって電流Iceの大きさを変えているとイメージすると分かりやすいかもしれません。
ちなみにEに流れる電流をIe、Bに流れる電流をIb、Cに流れる電流をIcとするとき、Ic/Ieで表される値を電流伝送率といい、αで値を示します。αは1より小さい値ですが、IcとIeはほぼ等しいので0.9以上の値となります。Ic/Ibは直流電流増幅率で、こちらはβで表しますが、hfeと表示される場合もありますので覚えておきましょう。
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