中堅製造業に効果的なグローバルERPの活用方法と、失敗しない導入方法を解説する本連載。最終回となる今回は、ERPを導入した後、実際に効果を出すための運営手法であるKPI管理を設定するまでのステップとその際の注意点を紹介します。
中堅製造業にとってもグローバル化が求められる中、そのIT基盤となるERPについてもグローバル仕様の導入が必要となります。大きな投資が必要となるERPですが、本連載では、その意義やメリット、失敗しない導入の進め方などを解説しています。
前回は、ERPの導入効果を高めるための1つのアプローチであり、「経営状態の可視化」を実現するための重要なポイントとなる「KPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標」というキーワードに絞って、その意味やKPIの管理とERPの親和性といった点をご説明しました。
今回はこのKPIを設定するまでのステップや、KPI管理を導入する際の注意点を幾つかご紹介したいと思います。なお、KPI導入にはさまざまなアプローチがあるといわれていますが、本稿ではその中でも基本的なアプローチをご紹介します。
本題に入る前に、まずはKPI導入の目的について触れておきます。企業の中ではさまざまな組織がそれぞれの施策を検討・実行しながら事業を運営しています。しかし、各部門が自分たちの思うままに施策を打っても、それが最終的に全社の目標に貢献できなければ、経営視点では「効果がない」と見なされてしまいます。これでは経営資源の浪費につながります。
こうした事態を避けるには、全社目標を基に各組織が担う役割(=組織のミッション)や、組織の中で実行される施策を整理していく必要があります。また、経営層が各組織の状況を的確に把握し適切な意思決定を下すには、各組織のミッションや実行する各種施策の状況を、全社目標と関連付けて定量的に測定・評価することが必要不可欠です。各種施策の状況を明確に把握できれば、「無駄になってしまう活動」を抑制することができ、社内リソースを全社目標の達成に向けて集中投下する仕組みを実現しやすくなります。この「施策の状況を定量的に測定する指標」が本稿のテーマである「KPI」となります。そしてこうした指標の設定に向けた“一連の流れ”を作ることがKPI導入の目的となります。
組織の中で実行される施策が決定されるまでの流れを大まかに整理すると、以下の5つのステップとなります。
このように、全社目標を起点に関連付けられた各要素が段階的に詳細化していくのが分かると思います。基本的にKPIの導入に関する取り組みは、この詳細化の流れに沿って進めていくことになります。以降は、それぞれのステップで具体的にどういったことをすればいいのかを説明していきます。
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