パネルディスカッションでは、「未来のスマート工場」をテーマとし、経済産業省製造産業局 ものづくり政策審議室長の西垣淳子氏、三菱電機の楠氏、インダストリー4.0プロジェクトにおける技術イニシアチブ「スマートファクトリーKL」の会長を務めるデトレフ・チュールケ氏、シーメンス・ジャパンでデジタルファクトリー/プロセス&ドライブ事業本部 事業本部長のミハエル・トーマス氏が登壇した。モデレーターは在日ドイツ商工会議所のマンフレッド・ホフマン氏が務めた
インダストリー4.0については日本からの関心が非常に高く、多くの視察団などが訪れているが、その関心について西垣氏は「IoTの普及によって製造業を取り巻く環境が大きく変わろうとする中でドイツがインダストリー4.0を打ち出した。製造業のビジネスはどう変わるのか、またドイツはどのような取り組みを行うのかという点で関心が大きく高まった」と述べる。
一方で楠氏は「ドイツが国策として進めているインダストリー4.0と、インダストリー4.0が目指す方向性にある“インダストリー4.0のようなもの”とを区別して見なければ駄目だ。三菱電機の取り組みで言えば、“インダストリー4.0のようなもの”については独自のアプローチで既に取り組みを進めている。一方で、ドイツが実際に進めているインダストリー4.0については、まだ直接的な関わりがない状況だ。今は1つのトレンドのようになっているが、自分たちがどちらにどのようにアプローチするのかは見極めないといけない」と話した。
ドイツ側にとっては日本は「同じ圧力の下にいる国だ」(チュールケ氏)という。製造業が国の経済を支える一方、少子高齢化が進み、労働力不足やエネルギー不足という問題を抱えている。さらに中国が製造立国として品質面でも追い付いてきており、今後も製造立国としての立場が維持できるかどうかが分からない状況だ。
「これらの流れの中で新たなモノづくりのプラットフォームが必要だというのがドイツの考えだ」とチュールケ氏は述べている。
一方でチュールケ氏は「世界にこの新たなプラットフォームを広げる上で、ドイツだけで定義してしまったのは失敗だったといえる。インダストリー4.0はドイツ国内で定義を進め当初は英語の情報もないような状況だった。ドイツは欧州だけを見てしまいがちになるが、本当は世界を見て多くの国とプラットフォーム作りをするべきだった」と考えを述べている。
パネルディスカッションの中では、日本とドイツが明確に協力していくというような話は出なかった。しかし、今後ドイツがインダストリー4.0の中で標準化を進める考えを示す中で「標準化の具体的な動きが出た場合はわれわれも参加し、自分たちの考えを発信していかなければならないと考えている」と楠氏は述べている。今後は国策としてのインダストリー4.0にも日本企業が参加する動きが出るかもしれない。
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