ZEV規制から読み解く環境対応自動車の攻防〔前編〕知財コンサルタントが教える業界事情(19)(3/5 ページ)

» 2015年04月02日 09時00分 公開
[菅田正夫MONOist]

ハイブリッド車はZEV適合車ではない

 HEV/HVを販売して、ZEVに関わる規制をクリアしてきた代表的な自動車メーカーがトヨタとフォードです。これらの企業にとってZEV規制の厳格化は大きな影響を受けることになります。

 さらには「2018年モデル」からは、これまではZEV規制の対象外だった中規模自動車メーカー(IMV:Intermediate Volume Manufacturers、該当自動車メーカーはBMV、現代、起亜、ランドローバ、マツダ、ダイムラー、富士重工業、フォルクスワーゲンの8社)にも、規制が掛かることになります※8)。これらの中堅8社は最低でもTZEVに対応することが求められるようになります。

※8)CABRの規制に関する資料(PDF)

 そこで、自動車メーカーのZEVクレジット対応策を見ていこうと思います。

ZEVクレジットから見た自動車メーカーの動向

 CARBは2014年10月17日に、2014年9月末までの1年間の自動車メーカーのZEV推進策への対応状況を公表しました。トヨタはハイブリッド車である「プリウス(PRIUS)」の販売効果で、これまではテスラに次ぐZEVクレジットの販売者でした。2013年9月末までの1年間に、テスラは1311.52クレジット、トヨタは507.5クレジットを販売しています※9)

※9)「2012 ZEV Credit」(2012年10月1日〜2013年9月30日)

 しかし、2014年9月末までの1年間では、ZEVクレジット販売上位から、トヨタの名前が消えました。トヨタにとって、世界で最大の市場は米国であり、その米国で最大の自動車市場となっているのがカリフォルニア州です(関連記事:永遠の「持続的成長」を目指すトヨタ、過去最高益も2014年度は「意思ある踊り場」)。この結果は、米国の中でも、特に環境規制が厳しいカリフォルニア州のZEV推進策に対応するために、2018年以降に備えたZEVクレジットの蓄積であり、FCVへの舵切りにつながることが推察されます。

 一方、2013年10月1日から2014年9月30日までに注目すると、日産自動車の躍進ぶりが目立ちます。米国でのEV販売が好調であるため663.6クレジットを販売しており、わずかだがテスラの650.195クレジットを上回っています※10)

※10)「2013 ZEV Credit」(2013年10月1日〜2014年9月30日)

 テスラが発表した2013年度1月〜3月期の決算では、他社へのZEVクレジットの販売によって、全体の12%に当たる6800万ドルの売上高を得ています※11)

※11)Tesla Motors:「FORM 8-K」(2013年5月8日)

 EV専業であるテスラは、ZEV推進策での規制対象自動車メーカーではないため、販売台数に応じたZEVクレジットを獲得し、他社に販売しています。テスラは「Annual Report2013」で、アメリカホンダ(American Honda Motor)にZEVクレジットを販売したことなども明らかにしています※12)

※12)Tesla Motors「Annual Repot2013

 ZEVに関わる規制をクリアできなかった場合には、自動車メーカーに課せられる罰則は重く、企業収益に直接影響します。そのため自動車メーカー各社はCARBの規制に対応せざるを得ない。そのため「カリフォルニア州が環境対応自動車の将来技術開発の方向性を決めている」ともいうことができます。

 そのため2018年以降の注目ポイントとして、以下の2点が挙げられます。

  • 大規模自動車メーカー6社がどのような事業開発戦略をとるのか
  • TZEVに最低でも対応しなければならない中規模自動車メーカー8社はどのような技術開発戦略に取り組むのか

 そこで、ZEVに関する規制対応策として、各企業がFCV(燃料電池車)をどのように位置付けているかを、Fuel Cell(燃料電池)関連技術開発の成果でもある「特許件数」を基に紹介していきます。

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