トヨタ自動車は2013年度決算を発表。“アベノミクス”による円安効果の他、徹底した原価低減活動を進めたことにより、今までで最高だった2007年度の実績を超え、営業利益、当期純利益ともに過去最高値を記録した。
トヨタ自動車(以下、トヨタ)は2014年5月8日、2014年3月期(2013年度)の決算を発表した。“アベノミクス”による為替の好影響や、収益構造改革の成果などにより、2008年3月期(2007年度)に記録した過去最高の営業利益と当期純利益を更新した。会見に登壇したトヨタの取締役社長 豊田章男氏は「ようやく“持続的成長”のスタートラインから一歩出ることができた」と手応えを語っている。
トヨタの2013年度決算は、売上高が前年度比16.4%増の25兆6919億円、営業利益が同73.5%増の2兆2921億円、当期純利益が同89.5%増の1兆8231億円となった。同社の過去最高実績は2007年度のもので、売上高が26兆2892億円、営業利益2兆2703億円、当期純利益1兆7178億円だったが、今回営業利益と当期純利益において過去最高を突破した。また販売台数もダイハツ、日野ブランド車や中国合弁事業会社などの製造分を合わせたグル―プ総販売台数が1000万台を突破し、1013万3000台に達している。
ただ、2014年2月の予想に対しては、営業利益は1079億円下回った。これには豪州の生産撤退による関連費用と、2009〜2010年の米国での大規模リコール問題に関連する制裁金を支払ったことによるものだという(関連記事:豪州の自動車生産が全滅へ――最後の砦・トヨタも2017年に撤退)。
また、2013年度の実績を2007年度当時と比較すると為替は1ドルが114円、1ユーロが162円と、今期(1ドル100円、1ユーロ134円)に比べるとさらに円安の状況があり、この為替差を営業利益に換算した場合、1兆円前後の営業損失になる。また、車種構成などでも現在と当時を比較すると8000億円程度の減益要因があるという。これらに対し「営業努力や原価低減活動などで吸収し過去最高益を成し遂げることができた」(トヨタ 取締役副社長 小平信因氏)と成果を強調する。
会見に登壇した豊田氏はリーマンショック後に就任し、経営の立て直しを進めてきた過去を振り返り「急成長しても急降下すれば多くのステークホルダーに迷惑を掛けることから『持続的な成長』が最も重要だということを学んだ」と語る。リーマンショックによる赤字転落や、大規模リコール問題などについても「販売台数や会社の成長スピードに人材育成が追い付かず、無理な拡大を重ねてきたから起こった」とし、「どのような局面でも1年1年着実に『年輪』を刻んでいく企業になりたい」と豊田氏は述べた。
また持続的成長を生み出す「成長のエンジン」として「もっといいクルマ」とそれを生み出す「人材」を挙げ「『もっといいクルマ』は当事者意識を持ち、現地現物で考え、即断・即決・即実行することができる『現場』からしか生まれてこない」(豊田氏)とし、現場力を引き続き重視していく方針を示した。
ただ、成長を持続させるためには、それに伴う組織的な成長が必要になる。「販売台数が600万台だった時のトヨタと、1000万台になった今のトヨタでは求められるモノが大きく変わってくる。収穫ばかりでは駄目で、種まきや耕作の時期が必要だ。その意味で2014年度は『意思ある踊り場』とし、成長への礎としていく」(豊田氏)と言う。実際に2014年度の連結業績見通しは売上高が25兆7000億円、営業利益が2兆3000億円、当期純利益が1兆7800億円とほぼ横ばいの見通しだ。販売台数見通しも日本の消費増税駆け込み需要の反動などからほぼ横ばいの1025万台としている。
ただ、設備投資額や研究開発費などは増やしており、将来の成長に向けた投資は積極的に行う方針だ。実際に2013年度に採用した「4つのビジネスユニット制」や「プラットフォームによるクルマ作り」に加えて、2014年4月には北米本社機能をテキサス州ダラスに集約すると発表した。また研究開発および設備投資では、環境技術の核となるハイブリッドを強化するとともに、低燃費ガソリンエンジン、燃料電池車、安全技術の開発と実用化、次世代モビリティ、ITインフラの革新などへ投資を行い、将来の成長の糧としていく方針だ。
豊田氏は「『持続的成長』を目指す中で、利益や利益率など数字の目標を示すことで目的と結果がすり変わることを最も恐れている。利益や利益率は当然重要な数値だが、それはプロセスの結果にすぎない。あくまでもプロセスを追求することで『結果として成長できる』ような企業にしていきたい」と抱負を語っている。
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