東京大学の桜井貴康教授らの研究グループは、室内光で発電し、音で発熱を知らせる、有機集積回路を用いた腕章型フレキシブル体温計を開発した。
東京大学は2015年2月18日、同大生産技術研究所の桜井貴康教授と同大大学院工学系研究科の染谷隆夫教授らの研究グループが、室内光で発電し、音で発熱を知らせる、有機集積回路を用いた腕章型フレキシブル体温計を開発したと発表した。
近年、脈拍や体温などの生体情報を常時モニタリングするアプリケーションが注目されている。有機トランジスターを用いた回路(有機集積回路)は、大面積・低コスト・軽量性・柔軟性を同時に可能にすると期待されており、これを用いた生体向けセンサー・デバイスの開発が多数進められてきた。しかし、電力や信号の送受信のために、複数のケーブルをつなぐ必要があり、装着感に問題があったという。
今回、同研究グループでは、有機集積回路、温度センサー、フレキシブルな太陽電池とピエゾフィルムスピーカーで構成される、腕章型フレキシブル体温計を開発。人の上腕部に取り付けると体温を常時モニターし、設定した体温を超えると周囲に音で知らせる機能を備えた。この一連の動作は、全て太陽電池で発電する電力で賄えるため、電池交換などのメンテナンスも必要ない。
温度センサーは、フレキシブルな高分子フィルム上に形成可能な抵抗変化型の温度センサーで、装着感のない柔らかさを可能にした。検知温度は、36.5〜38.5℃の間で外部から設定できる。
また、有機集積回路とピエゾフィルムスピーカーにより、発熱を音で周囲に知らせるフレキシブルな電子ブザーを開発した。さらに、部屋の明るさに応じて電圧を調整する有機電源回路を開発したことで、回路がない場合と比べて使用できる部屋の明るさの範囲を7.3倍に広げている。
今回の研究成果により、太陽電池の電力だけで動作する、エネルギー自立が可能なセンサーシステムが実現できたという。この原理は、温度の他に、水分や圧力などさまざまなセンサーに応用することが可能で、ブザー音だけでなく、体温の情報や多点での測定結果を送るといった応用も期待できるとしている。
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