SMASHの各項目を挙げたら、今度は簡単なシーンを描きます。ちょうど、アニメや映画の“絵コンテ”のように、背景や小道具、人物とその動きなどを描き入れていきます。その際、プロダクトそのものは描かずに、どのくらいの大きさか、人がどのように触れるものかが分かるようにします。ここではあえて、前回スケッチしたカタチを捨てて“使用シーンだけ”に集中します。
そうすることで、
といった改善案が浮かびやすくなります。
プロダクトを作るというと、徹頭徹尾モノのカタチにこだわって、最後の最後にはミクロン単位の曲面をすり合わせている……そうした現場もプロの世界にはあります。しかし、Product for 1000のプロジェクトで大切なのは「自分が一番使いたいシーンに、目的を達成できる道具であること」です。「うっとりするようなツヤを放つ至高のマウス」ならば前述のような工程も発生するでしょうが、「トラックパッドで物足りなくなった瞬間に、すぐに出てくる携帯型マウス」であれば、サイズの設定や携帯性を高めるための検討がより重要になります。
SMASHで使用シーンを検討することで、プロダクトのカタチだけでは想像できなかった機能や形状が浮かび上がってきます。
「たまご型ケース(卵型USBケーブル収納)」を考案したdyamaokaさんは、「職場で部下がニヤッとして、いじってくれる」ためには、「USBケーブルを貸してくれるのかな? と期待したら、なぜか卵を出してきた! という出オチ感」がよいのか、「卵型であることは特にツッコ込んでくれないクールな後輩を、『卵の殻を割る』アクションで一気に笑わせる」のが楽しいのか、どこに“興奮のピーク”を設定するか真剣に検討していました。ピークによって、卵の殻がギザギザにかみ合うのがよいか、いっそ破片が飛び散ってパズル的にするのもありか……と、自然と形状にも意識が向いていきます。
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