やぎさわさんのプロダクトは、達成したい目的の影に「イクメンパパと奥さんのリアルタイム連携による仲良し度のアップ」という切実な願いが見受けられます。そもそも、前回なぜドアノブだったのか? 「実は、すごく早く帰宅したり、遅くまで帰れなかったりするときに、帰宅予定をメール連絡しないことでさまざまな不都合が生じている」のだそうです(特に深くは追求しません)。
そんな良き夫でありパパであるやぎさわさんにとって、「帰宅時にドアノブを握った瞬間に思い出す(メールし忘れた! という)ヤバイ感」「会社のドアノブを握ったときにメールのことを思い出していればという後悔」に、たまたまドアノブが共通していました。このエピソードは、いつもとても盛り上がってしまうのですが、心配ご無用。やぎさわ家はとても円満なご家庭で、今回のアイデアはさらなる幸福を獲得するためのプロダクトなのだそうです。
「Design」という言葉を英和辞典で引くと、第一義的に「設計」と翻訳されます。しかし、日本のモノづくり企業で、設計部とデザイン部が別々の部門となっていることも多いように、日本語では2つの言葉は“別の意味”を持っています。
なぜ、「デザイン」と「設計」、そして「デザイナー」と「設計者」に分かれてしまったのかは非常に興味深いですが、言葉の持つイメージはいざ自分が取り掛かろうとするときに、無意識に影響を及ぼすことがあります。
例えば、「設計しよう」と思ったら、きっちりと寸法や角度を決めなければならない――。そんな印象があるのではないでしょうか。同様に「デザインしよう」と思ったら“センス”が必要で、自分にオシャレなものが作れるのか? と思うかもしれません。しかし、これを「(取りあえず)作ってみよう」と置き換えたとき、デジタルファブリケーション技術が私たちをアシストしてくれます。例えば、フリーハンドできれいな円や曲線が描けなくても、ソフトウェアが製図をサポートしてくれますし、立体透視図を作図するまでもなく、3Dデータを全方位から眺めて見ることができます。
「設計」を英訳すると「Plan」が当てはまる場合もあります。「設計」というと実作業を伴うイメージですが、「Plan」というとプロジェクトの全体像を計画しているようなイメージになります。自分のアイデアをカタチにする際、イラストを描くことができなくても、どんな機能が必要か、どんな体験をもたらすものであるかをプランニングすることで、「Design」部分を分業化することもできるでしょう。個人が仕様書を作り、クリエイターに依頼することで新しいモノを作れる未来があるかもしれません。クリエイティブ職に多いプランナーという肩書が、「3Dプランナー」「ファブリケーションプランナー」など、モノづくり業界にも浸透していくのではないでしょうか。
余談ですが、Product for 1000でも「設計」「デザイン」を「Design」にまとめ、「Plan」のステップを練り直してテキストのブラッシュアップを行っています。
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