また、同社CTOのコヴァルスキ氏はオートデスクが考える将来的な技術開発の方向性とビジョンを示した。その中でキーワードとして挙げたのが「自然界にあるように」ということだ。
コヴァルスキ氏は「オートデスクは、テクノロジーと設計・デザインを、自然界と照らし合わせながら考えている」と語る。設計者の手間だけを考えれば、四角形などを組み合わせて作成する方が効率が良いが、それでは正しい意味での設計の効率化をできていない。しかし、既存のデザインツールの枠組みの中だけで考えていては、その上位レベルでの“効率的なカタチ”は見えてこない。そこで、われわれが重視しているのが、自然界に存在する形やデザインを参考にするということだ。
コヴァルスキ氏は「われわれは生命体のさまざまなプロセスからデザインを考え始めた。デザインの考え方を根本から変え、生命体の持つ自然の在り方をデザインに取り入れることを考えた」と話す。
自然のままを作り出すといっても以前は、“ありのまま”の膨大なデータ処理は難しかったが、最近ではクラウドコンピューティングやビッグデータ解析の技術などが発展し、コンピューティングパワーにより、生命体の動きなどが再現できるようになってきている。
オートデスクが現在取り組んでいるのは、ビッグデータとクラウドコンピューティングを活用したデザイン/設計ツールの開発だ。特殊なアルゴリズムを活用し、ユーザーが基準や設定を決めて、それに基づいた設計を自動でコンピュータが行うというもの。デザイナーがパラメーターとプロジェクトのゴールを考え、コンピュータがベストな可能性や、限りなくベストなソリューションを見つけてくれるように、必要な情報を与える。これを何度も繰り返して計算を続けることで、最終的にベストなものが見つかるという仕組みだ。
「これらの結果は今まで自分たちが考えられなかったソリューションをコンピュータが与えられるということを意味する。われわれが到達できなかった所に到達できるようになったという意味で革新的だ」とコヴァルスキ氏は語る。
またコヴァルスキ氏はデザインプロセスに生命を与えることが重要だという。「デザインは生まれて、最終的には破壊されていく。世界のダイナミズムで売れる製品が変わるとそれは捨てられる。常に創造し続け、新しいモノを生み出していかなければならなかった。そのデザインアプローチを変革する必要がある」(コヴァルスキ氏)
従来のデザインプロセスでは「あまりにもモノに焦点が当たり過ぎていた。その先にある環境や、ユーザー体験などに視点が行っていなかった。ユーザーにどういう体験を与えるかということを考えてデザインをしていなかければならない」とコヴァルスキ氏は語っている。
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