改善活動は、楽しくなければなりません。「楽しい」は、満足で愉快な気分であることです。従って、関係する人々が改善活動や改善結果に満足して、皆が楽しい気持ちになれることを優先して考えなければなりません。主役は、その仕事や作業している本人であることを忘れてはいけません。また、結果がある程度の予測が可能な範囲の改善ではあまり楽しさが味わえません。高い目標を掲げて、結果が予測できないことに全員で知恵を出しながら挑戦した改善ほど、過程の楽しさや結果に対する感動を味わうことができます。
改善活動というと、改善する人と改善される人が別々であったり、改善と称して十分な説明をせず、納得してもらえないままに押しつけてしまうことがよくあります。しかし、そのような取り組み方をしていては、楽しいはずがありません。全員が自主的に改善活動に参加できるような状況を作り出すことが必要です。
そのためには、どうすれば良いのでしょうか。まず「全員が改善に参加する機会を平等に与えられていること」が大事です。次に「目的は何か、それが達成された時、何がどう変わるか」がキッチリと説明されていることです。誰が何に困っているかを明らかにし、その困っていることの改善手段として設備稼働率を上げるというように、人がその中心でなければなりません。
例えば、「設備の稼働率が低く、生産上のネックで納期遅れが起こっている。そのため、担当者は客先からの納期督促で、残業・休日出勤が日常茶飯事となっている」というような現象があったとします。この困っていることを改善するために、設備の稼働率を上げよう、という形にならなければいけません。
“具体的に誰か”の助けにもならないような設備稼働率向上は、誰もが納得して、その改善に参加することはできません。改善にはまず何を改善するのか、つまり問題の発見について、皆の同意が先行すべきです。そのためには、かなり具体的でなければ同じイメージを抱くことは困難であることを承知しておくことも重要なポイントです。
「人のための改善」とは、突き詰めると“ムリ働き”と“ムダ働き”の排除です。これらに優先的に取り組まなければなりません。“ムリ働き”の排除を一言でいえば「疲労から解放して楽に仕事をしよう」ということです。また“ムダ働き”の排除は「役に立っていない仕事は止めて、もっと価値のある仕事をしよう」ということになります。ムリ働きやムダ働きとは、次のようなことです。
ムダの特徴は「ムダと気付かない人にとっては、どのようなムダであってもムダではない」ということです。従って、ムダについて具体的に「なぜムダなのか」という考えを持つことが必要になってきます。つまり、ムダの排除には、ムダを発見する力と、そのムダを排除する力が必要です。
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精度の高い生産管理や原価低減の促進、製品原価の把握に高い関心が寄せられているにもかかわらず、そのベースとなる標準時間(ST:Standard Time)が多くの企業で、ほとんど活用されていない実態に驚かされます。例えば、生産管理における工数計画や負荷状況、予定原価と実績原価、これらの基準となる指標は全て標準時間です。さらに、その時間を日(d)で管理するのか、時間(h or min)で管理するのかで、それらの管理水準が大きく変わってきます。管理単位が日(d)よりも時間(h)、時間よりも分(min)というように、厳格であればあるほど、問題発見の機会も高まり、それらの解決によって利益も増していくことになります。
これらをどのように考えるかで、企業のありようも大きく異なり、これからの事業の伸び代にも影響してきます。
≫次回「効果的な原価低減推進の考え方【前編】」はこちら
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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