矢野経済研究所は、インフラ点検ロボットメーカーおよび販売会社、研究機関、関連団体などを対象に、国内のインフラ点検ロボット市場についての調査を実施(2014年4〜6月)。結果をレポートとしてまとめ、その概要を発表した。
矢野経済研究所は、インフラ点検ロボットメーカーおよび販売会社、研究機関、関連団体などを対象に、国内のインフラ点検ロボット市場についての調査を実施(2014年4〜6月)。結果をレポート(「老朽化インフラ点検技術・ロボットの可能性と将来性 2014」)としてまとめ、その概要を発表した。
日本の高度成長にあたる1960年代に構築された道路や橋梁、トンネル、管路・配管、水中設備などのインフラ設備・施設の多くは、既に耐用年数を超えており、今後、維持管理や更新の在り方が大きな課題となっている。
現状、こうしたインフラ設備・施設の点検は、人手による作業が中心となっているが、容易に作業員が近づくことのできない場所(点検対象)も多く、作業効率の点で課題を抱えている。また、多くの点検費用や期間をかけても100%完全に実施することができないという問題もあり、特に地方自治体が管理する設備・施設では対策の遅れが指摘されている。
こうした背景を踏まえ、2014年度から国土交通省と経済産業省が「次世代社会インフラ用ロボット開発・導入の推進」プロジェクトを実施。近接目視や打音検査といった従来人手で行ってきた点検作業の代替を目的に、橋梁やトンネル、水中設備を対象としたインフラ点検ロボットの開発支援をスタートし、2018年度までの実用化を目指している。
現状、インフラ点検ロボットの多くは、対象設備・施設ごとに、参入メーカーが限定的にロボットを開発し、実用化している(汎用ロボットを応用した事例含む)。また、参入メーカーも、ベンチャーから大手企業まで幅広く、主に、設備点検会社、設備維持管理会社、建設会社、機械メーカーなどが取り組んでいる。
実用化されているインフラ点検ロボットのほとんどが製品として流通しているわけではない。多くの場合、ユーザー企業が自ら開発・製造して自社の業務に使用するか、ユーザー企業がロボット関連メーカーと共同開発して独占的にその製品の供給を受けるかである。つまり、ユーザー企業が製品として、自由にインフラ点検ロボットを選択し、購入できるという環境は形成されておらず、いまだ市場として確立されていないのが現状だ。
今後の予測としては、前述の次世代社会インフラ用ロボット開発・導入の推進プロジェクトの成果が、市場規模に大きな影響を与えると考えられる。
2015年度までは、ロボットメーカー単独の展開や業界団体、大手ユーザー企業などが主導する開発が中心となり、限定的な出荷にとどまるという。2016年度になると同プロジェクトの実証実験などを通じて、一部のインフラ点検ロボットの製品化が始まるとし、288台の出荷を見込む。特に、橋梁点検において需要が見込まれ、全体を大きくけん引するとしている。
その後、インフラ点検ロボットの認知向上やその効果が期待され、製品数とともに出荷台数も増加するとし、2020年度の国内インフラ点検ロボット市場はメーカー出荷台数ベースで1005台に達すると予測する。
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