MONOist モノづくりを取り巻く環境の変化についてどう見ていますか。
山本氏 ここ数年、中国や新興国で「自動化したい」という要望が強まる流れがある。特に中国は大幅な賃金上昇があり、自動化へのニーズは非常に高い。例えば、現在進んでいる商談では「この生産ラインを自動化できないか」や「この生産ラインの稼働人数を100人から半減させたい」というような具体的な話が出ており、状況は切迫している感じだ。
一方で日本は、日本企業が海外進出先への自動化ニーズは高まっている点では同じ傾向であるが、日本国内のモノづくりはより上位のものを狙っている。例えば、放電加工機では、超精密金型向けのものや複雑な金型をより簡単に作る環境のために、投資をしているイメージだ。グローバル化の流れが避けられない中、日本に立地する意味を考え、より高度なモノづくりを目指す動きは強まっている。
これらのどちらのニーズにおいても三菱電機にとっては追い風だ。例えば、自動化したい需要が増えれば、われわれの製品が求められる機会は増える他、e-F@ctoryとiQ Platformについてもニーズが増える。
従来人海戦術に頼ってきた新興国の企業は「自動化をどう行うべきなのか」ということが分からない場合が多い。そのため、工場レイアウトの構築やデータ管理などをパッケージのようにまとめ上げるe-F@ctoryのコンセプトは、これらのニーズに非常に適合している。差別化にもつながり、こういう流れがある今がチャンスだと感じている。
MONOist 製品構成としてはどういう取り組みが必要だと考えていますか。
山本氏 自動化ニーズは引き続き需要があると考えているが、全般的には2極化傾向が強まると見ている。三菱電機が強いのはハイエンドの製品だが、ローエンドまでを含めたニーズに応えていく方針だ。ローレンジでは新興国メーカーが成長し、価格重視の状況の中で競合関係が厳しくなってきている。
さまざまなアプローチが考えられるが、基本的にはその市場で不要な機能は外し、価格を抑えていくことを考えている。新興国は「最低限これができればいい」というニーズが多い。市場に合わせた“必要十分”な製品を用意していく。また中国にある2工場を活用し、消費地生産・現地調達でコスト削減を進めていく方針だ。為替の環境によって状況は大きく変わるが、今はいい環境であるので、順次見直しながら対応を進めていく。
MONOist 製品のドメインを広げるということも考えていますか。
山本氏 総合的なソリューション提案を強化する流れの中で、不足しているコンポーネントについては、M&Aやパートナーシップを通じて補完できるように取り組んでいく。例えば、センサーでは京都府のエニイワイヤを買収した他、「e-F@ctory Alliance」として、パートナーシップによる補完関係を実現している。SIや機器、ソフトウェアなど各パートナーと連携し、共同提案を進めている。今後も必要であれば、さらなるパートナーシップの拡大などを進めていく方針だ。
一方で、アジアや新興国で成長している水処理など、SIerとの協力で新たなビジネスを構築できる方策を模索している。さまざまな連携を広げていくことで、ビジネスドメインの拡大を積極的に進めていきたい。
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