伸び悩みとは言いつつも、1990年代後半には厳選された用途に有効なロボットに支えられ市場拡大の傾向となりました。2000年には、急増する情報電機品需要に対応して、液晶半導体を含む設備投資が集中して過去最高の8万台を上回る産業用ロボットが出荷されました。
しかし、2001年には一転して出荷半減となります。ITバブル崩壊により設備投資に急ブレーキが掛かりました。しかし2003年ころからロボット需要は戻り始め、リーマンショックまでの期間で出荷8万台規模に再成長します。急速な輸出の拡大が再成長の原動力になったのです。「世界の工場」といわれるようになった中国製造業の急伸が最大の背景です。図7に日本のGDPと中国のGDPの勢いの差を示します。ちょうど2005年頃からの中国の快進撃がめざましく、2010年には中国は日本を抜いて、米国に次ぐGDP世界第2位に躍り出ます。
リーマンショックでは出荷が対前年半分以下という過去最大のダメージを受けたものの、急復活により、2011年以後年間10万台に迫る出荷台数を記録し続けています。ただしリーマンショックを挟んで50%強だった輸出比率が70%超に急増し、ロボット産業は完全な輸出依存型産業へと変わりました。1980年代には「より良い性能のロボット」、1990年代には「より価値のある用途に合ったロボット」を求めるように変化してきたロボット産業への期待は、2000年代以降は機械としてのロボットの性能ではなく「目的に合った生産システムをミニマムコストで実現できるロボット」の追求へと変化します。
ロボット産業にとって需要の好調は望ましいものの、その背景にある日本の国内製造業の試練とアジア圏製造業の急拡大には、手放しでは喜べないものがあるといえるでしょう。
今回は、産業用ロボットとは何かについて紹介しました。次回はロボット産業への期待の変化も含め、現状のロボット産業の抱える事業面や技術面での課題について解説します。
「国内市場の縮小」「生産による差別化要素の減少」「国内コストの高止まり」などから、日本の生産拠点は厳しい環境に置かれている。しかし、日本のモノづくり力はいまだに世界で高く評価されている。一方、生産技術のさらなる進歩は、モノづくりのコストの考え方を変えつつある。安い人権費を求めて流転し続けるのか、それとも国内で世界最高のモノづくりを追求するのか。今メイドインジャパンの逆襲が始まる。「メイドインジャパンの逆襲」コーナーでは、ニッポンのモノづくりの最新情報をお伝えしています。併せてご覧ください。
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