これはまさに夢の企画――巨大ロボが殴り合う「リアルロボットバトル」に密着してきた『ロボット日本一決定戦!リアルロボットバトル』の舞台裏(4/4 ページ)

» 2014年02月18日 10時00分 公開
[大塚実,MONOist]
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優勝候補同士による決勝戦に

 準決勝の第1試合は、「HJM-47」対「狐火」。ともにスピードのあるロボットだが、第1ラウンドは「狐火」が着実に攻撃を決めて4−2でリード。はじめ研究所チームを慌てさせたが、第2ラウンドで「狐火」が停止。「狐火」はそれまでにも何回か動かなくなっており、信頼性に不安があったが、今回は復活できず、TKO負けとなってしまった。停止したのは、通信の問題が原因であったとのこと。「狐火」にとっては、リードしていただけに残念な結果に。一方の「HJM-47」は命拾いしたかたちとなった。

 準決勝の第2試合は、「キングカイザーZ」対「GANTON-52」。ヒット・アンド・アウエーで戦う「キングカイザーZ」に「GANTON-52」はまさにサンドバッグ状態で、1ラウンド終了時で4−0。2ラウンド目で巻き返したい「GANTON-52」だったが、リードを広げられてしまい、最後にはなんとエンスト。こうなってはもう「GANTON-52」に動くすべはなく、ここで万事休す。

油圧のパワーを生み出す「GANTON-52」のガソリンエンジン 油圧のパワーを生み出す「GANTON-52」のガソリンエンジン

 そして迎えた決勝戦は、「HJM-47」と「キングカイザーZ」という、ROBO-ONE経験者同士の対決となった。白いロボットと赤いロボットのバトルということで、ガンダム世代的にも定番の構図である。

 1回戦から激戦続きだった「HJM-47」に対し、「キングカイザーZ」はほぼ無傷。ここまで非常にスマートに戦ってきた。しかし決勝戦では一転、相手に合わせたのか、接近しての“どつき合い”バトルとなった。

 先制したのは「HJM-47」。「キングカイザーZ」にとっては、この大会で初の失点である。試合は「HJM-47」が常に先制し、「キングカイザーZ」が何度も追い付くという展開に。第1ラウンド終了時のスコアが8−6だったことからも、どれだけ激しい戦いだったかが想像できるだろう。

意外な形で激闘に決着が!

 ここまでコア数が減ると、残っているのは基本的に壊しにくい場所にあるものだけだ。「キングカイザーZ」の残りコアはたった2つ、左肩にあるコアだけなので、守りやすいともいえる。猛ラッシュを仕掛け、第2ラウンドの残り1分で同点に追い付き、延長戦に持ち込むことに成功した。

 延長戦では、新たに胸に3個のコアを設置。いずれか1個を先に破壊したチームが勝利となる。しかし意外な形で、勝負はあっさりとついた。開始早々、突っ込んだ「キングカイザーZ」の胸に「HJM-47」の腕が当たり、コアを破壊。この瞬間、「HJM-47」の優勝が決まった。

 この場面、「キングカイザーZ」はノーガードのまま棒立ちで突っ込んだように見えたのだが、この点について、丸氏は自らのブログで説明している。それによると、「HJM-47」側がブーストボタンを押すのが見えたために、自らの判断で攻撃を中止。しかし、歓声で指示が下半身を操縦していた長男に伝わらず、あのように無防備な形で突っ込むことになってしまったとのことだ。

 「どちらかのチームがブーストボタンを押したら、両方のロボットはその場で静止しなければならない」というルールがあったそうで、そのため丸氏は攻撃を急きょ中止したのだが、審判がブーストタイムを宣言するより一瞬早かったために、コアの破壊は有効とされたようだ。ちょっとスッキリしない形での幕切れとなってしまったが、決勝戦にふさわしい名勝負であったことは間違いないだろう。

「キングカイザーZ」をメンテナンス中の丸氏 「キングカイザーZ」をメンテナンス中の丸氏。1人で作って1人で直すのもすごい

リアルロボットがもっと見たい!

 ROBO-ONEは2002年に始まったばかりのころ、まともに歩けないようなロボットも多かったが、回を重ねるごとに急速にレベルアップし、近年は非常に見応えがある試合が増えてきた。そして、2009年の第16回大会では、人間を乗せることまで可能な1m級ロボットが登場して優勝。“等身大”ロボットも視野に入ってきているのだが、ここで大きな障害となるのは、技術的な問題というよりも、むしろコスト的な問題だろう。

 ロボットの身長を2倍にするためには、コストは通常2倍では済まない。身長が2倍になると、体積や重量は2の3乗の8倍になる。すると構造の強化やモーターを大出力にするなどの追加対策が必要になり、さらに重くなってしまうこともある。自動車1台くらいの費用なら平気で投入する自作ロボットビルダーも、さすがに個人で気軽に手が出せる規模ではなくなってくる。

 またロボットが大きくなると、大会を運営する側の負担も増えてくる。等身大ロボットになると、現状のリングでは狭過ぎる。もっと大きくて頑丈なリングが必要になって、開催できる会場がかなり限られてしまう。それに最も懸念されるのは安全面だろう。100kgオーバーの重量クラスになると、最悪、死亡事故が起きる危険性すらある。警備員を雇ったりすると、運営費はどんどん膨れ上がる。

 しかし、「お金をかければできる」ことに対し、本当にお金を出して実現してしまったというのは、やはりテレビならではの力といえるだろう。技術的な側面から見ると、まだ少し無理があったようには見えるものの、ROBO-ONEの第1回大会と同じで、細かい点はさておき、まずは「実現した」ことに大きな意義があるのではないだろうか。

マルミエーターUNCHI48(センター)の入場シーン 「マルミエーターUNCHI48(センター)」の入場シーン

 そういえば、あの伝説の番組『アメリカ横断ウルトラクイズ』も、日本テレビの開局25周年記念としてスタートした企画だった。リアルロボットバトルも同じようにシリーズ化してほしいところだ。気になる「第2回」の開催について、日本テレビ側にコメントを求めたところ、「検討中」との回答が返ってきた。これは期待できる……かも!?


筆者紹介

大塚 実(おおつか みのる)

PC・ロボット・宇宙開発などを得意分野とするテクニカルライター。電力会社系システムエンジニアの後、編集者を経てフリーに。最近の主な仕事は「人工衛星の“なぜ”を科学する」(アーク出版)、「小惑星探査機「はやぶさ」の超技術」(講談社ブルーバックス)、「宇宙を開く 産業を拓く 日本の宇宙産業Vol.1」「宇宙をつかう くらしが変わる 日本の宇宙産業Vol.2」(日経BPマーケティング)など。宇宙作家クラブに所属。

Twitterアカウントは@ots_min



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